ブルガリアでの日々(U)      「りる」第18号より

     ブルガリア       S.I.

                     平成9年度2次隊

                     日本語教師

 私がブルガリアに来て半年が経ちました。この半年、特に早いとも遅いとも感じず、まあこんなもんかーといった具合で過ぎたように思います。

 長い間冬に閉ざされていただけに、春を迎えると大地は一気に息を吹き返し、一面緑のじゅうたん、自然も人も喜んで・・・と思いきや、5月に雪が降ったりと不安定な天気、一体いつになったら安心して衣替えができるんだろう、と思っているうちに夏が来ていました。こちらには梅雨がないせいもあり、突然夏が来ます。パザール(市場)にはたくさんの果物が並び、道端にはアイスクリーム屋さんと、やたらと誘惑の多い季節になりました。

 果物といえば、今ラズベリーや、さくらんぼが旬です。わざわざ買いに行かなくてもその辺の木に実っていて、子供たちのおやつになっています。先日散歩をしていると、知らないおばさんに「ついて来なさい。」と言われ、何もわからずついて行くとどんどん町から離れていく、一体どこへ・・・と思い始めた頃着いたのは、彼女所有の小さな果樹園、そこで約一時間ひたすらさくらんぼやラズベリーを摘むことに・・・。日焼けしてしまいましたがお土産に野菜なんかももらって、ちょっと嬉しい一日でした。

  黒板消しがなくスポンジを水でぬらして拭きます。

 前回ブルガリアの人は大変フレンドリーと書きましたが、それは外国人に対してだけでなく、ブルガリア人同士にも同様のことが言えます。テーブルを囲んで食事中、やたらと盛り上がって大騒ぎ、てっきり皆友達だと思っていたら、誰もが初対面だったりします。仲良くなるとほっぺにキス、というあいさつ、人と人との距離がとても近いなあ、と感じます。未だに慣れないのはカップルの仲の良さ、それが昼であろうと夜であろうと、レストランであろうと学校であろうと、とにかく二人だけの世界、また周りの人も当り前?といった感じで全くの無関心、なんだか私一人で、ドキドキしています。

 いろいろな人と知り合いになるにつれ、ブルガリア人の日本に対する関心や知識の高さに驚かされています。東京だけでなく大阪、神戸、京都、名古屋(残念ながら香川を知っている人にはまだ会っていませんが、)といった地名から人口密度、経済や法律に至るまで、本当に様々なことを知っていて、ある人に「逆に日本人はブルガリアのことをどれくらい知っているの?きっと知名度低いんだろうなー。」と言われ、返答に困ったことがあります.私自身こちらに来ることが決定するまでは、ブルガリアといえばまずヨーグルト、次に・・・ヨーグルト、とにかくヨーグルトしか知りませんでした。

 けれども中にはそりゃあないだろうという質問もあります。「侍はまだいるのか、、彼らの給料はいくらだ。彼らは公務員か。」とか、「日本人はクモを食べるそうだが美味しいのか。」とか、「ワールドカップで負けたら選手達には切腹が待っているのか。」等々、半分冗談のようで実は真剣に聞いてくるから説明が大変です。(相変らずブル語は難しい。)

 ・・・と、また職種について書くことを忘れていました。日本語の試験もそれなりに終わり、約3ヶ月という大きな夏休みの始まりです。こちらの人は休む時に徹底的に休むのでメリハリがあっていいと思います、学生は皆田舎へ帰省し、アルバイトに励む予定、夏期講座のようなプログラムを選んで、勉強する予定の学生もいます。

  2年生の授業 生徒はよく笑う・・・とてものびのびしています。

とにかく勉強する学生達、学年末試験も一科目5・6時間は当り前だそうで、何でそんなに長いの?!と聞くと、習ったこと全てがテストになるとのこと、それにしても信じられない量と時間・・・。(ちなみに日本語のテストは1時間かからないものでした。)

そして以前自分の店が忙しくて来られないと言っていた学生は、今度はなんと「結婚するので来られません。」と言ってきて、一週間後には結婚指輪をはめていた・・・。相変らず何でもありで楽しませてくれる学生達、年齢がそう変わらないので、友達のような感覚、授業のあるなしに関わらず、よくお茶を飲んでは私の怪しいブル語と学生のこれまた怪しい日本語でおしゃべりしています。

 お茶と言えば、こちらでは必ずといっていいほど、一度に2つ以上の飲み物を注文します。私がコーヒーだけ頼むと、「それだけ?」とよく聞かれます。何より不思議なのは人気の組み合わせがコーヒー(ホット)とコーラということ。しかも一口ずつ飲むので、一体口の中でどんな味になっているんだろうと考えずにはいられません。中には初めからコーヒーとコーラを一つのコップに混ぜて飲む人もいて、もぉびっくりです。しかしブル人は皆、目を細めて「チュデースノ!(最高!)」と言って飲んでいるので案外いけるのかもしれません。今度飲んでみよう・・・。興味のある方は試してみて下さい。気分はきっとブルガリア・・・(?)