現地隊員レポート             「りる」第60号より 

                                                    カメルーン     N.M.
                                                             平成23年度2次隊
                                         村落開発普及員
    

 

『カメルーンといえば』

 「カメルーンといえば・・・サッカー?」正直そのぐらいしか印象のなかったこの国で活動を始めてはや1年。村の美しい風景に癒されながら、日々を送っています。任地:バングラップはとても興味深い村で、今でも王様が存在します。

日頃村人と挨拶をするときにかわす握手、王様には絶対に求めてはいけません。王様は特別な存在。もちろん特別な挨拶があります。まず拍手のように手を2回打ち、その後左手の手のひらを胸のあたりで地面と平行になるように上に向け、その上に右手で握りこぶしを作ります。そして、「アゼェ」と一言。「アゼェ」とは「ご挨拶申し上げます。」という意味だそう。

 王様と

村人は時々王様のところへご機嫌伺いに行くのが習慣になっています。私も村に暮らす者として、この習慣に従っています。赴任直後、あまり王様のところに顔を出さなかった時には、「もっと頻繁に訪ねてこないと、存在を忘れてしまう。会いにきて、どんな活動をしているのか報告しなさい。」と、王様から注意をうけたこともありました。

伝統的な衣装を着て獣の毛皮の前に置かれた特別な椅子に座っている様子は、まさに王様という感じですが、時にジャージを着て農作業をすることもあるらしいからおもしろいですよね・・・

 Bangoulop 風景

 私はこんな異国で村落開発普及員として活動をしていますが、村落開発普及員とはつまり、村の発展のためなら何でもする「何でも屋さん」。今までの主な活動は、村の収入向上をめざした新規農作物の導入と、現在村に存在する作物を使った加工品生産です。新規農作物導入のために、キノコ栽培・NERICA米(New Rice For Africa)栽培セミナーを実施済み。

 NERICA米 種まき実践

これらは「換金」作物としての導入であることを参加者共通の認識とし、セミナー開催にとどまらず、その後の栽培普及・販路開拓のために共に努力していくことを確認しました。が、キノコ栽培に関してはその後自主的に栽培を始めているのは、私の上司が所属する約6名の農民グループのみ。ネリカ米はセミナー時に配布した種籾を蒔いて栽培に挑戦している人が約10名。新しいことを始める事がいかに難しいかを痛感しています。

ただ、どの分野においても、少数ながらやる気を持って取り組みを始めてくださった方がいることに感謝し、その芽を潰さぬよう、残りの任期粘り強く取り組んでいくつもりです。特に、栽培を始めた方々の協力を得て実際に「稼ぐ」姿を他の村人たちに見てもらい、彼らのモチベーションの向上につなげられればと思っています。

 加工品生産に関しては、村でたくさん栽培されている大豆を使って豆腐作りのセミナーを実施し、ご近所の女性達と43本の豆腐の串揚げを作り実際に販売しました。現地の人にとっては初めての食べ物なので味見用に18本を費やしましたが、1本100F(100フラン、約20円)で1700F(約340円)の売り上げ、8本が余ったという結果です。

  揚げ豆腐

こちらは実際に現金を手にできただけあって女性達のモチベーションはとても高く、セミナー後自分達自身で豆腐作りにチャレンジしてくれました。しかし、残念なことに失敗・・・この失敗がきっかけで、やる気はぐっと落ち込んでしまいました。今後失敗の原因を追求し、なんとかまたやる気を取り戻してもらえるようにと思っています。

 豆腐作り

 その他には、壊れた水汲みポンプを修理すべく、「技術者探し」と「修理費見積もり」のために動き始めたところです。ただ、修理後もメンテナンス等継続して管理していく必要があるため、同時進行で水管理組合の組織化をすすめようと、現在Meetingで話し合いをしています。

また、草の根無償資金援助を使用して、資金不足のために頓挫している計画をすすめていけないかとも考えています。可能性としては、学校建設計画と王様の家の博物館化計画の2つ。特に王様の家の博物館化計画は、観光業振興のための軸となる活動です。とてものどかで美しく、伝統の残るこの村を、たくさんの方に知って頂きたいというのが、実は王様の切なる願いなのです。

 NERICA米 座学

 私自身としては、逆に日本のことも村の方々やカメルーンの皆様に伝えていきたいと、11月に開催された日本大使館主催の文化交流事業:J−pop祭(音楽祭)に参加し、そこで日本のヒットソングを何曲か歌わせて頂きました。今後は日本とカメルーンの学校間での手紙による交流を計画しています。

 NERICA米栽培を始める農業

 残りの任期ももうあと1年足らず。何が残せて何が残せないのか、あるいは何も残せないのか・・・いろいろ不安があるのは正直なところですが、焦らず、「村のため」という原点を常に忘れず、一歩一歩進めていきます。