現地隊員レポート             「りる」第46号より 

                                                    ガーナ   M.M.
                                                             平成19年度2次隊
                                         感染症対策
    

 

『ガーナ便り』

 「アクワーバ」(現地語でWelcome)と迎えられ、早や6ヶ月が過ぎようとしています。初めてのアフリカの地。この国に来る前は、不安な気持ちでいっぱいでしたが、今はここガーナが大好きです。

〈食べ物〉
  ガーナの代表的な食べ物の一つにFUFUという、日本のおもちに少し似た食べ物があります。作り方も、似ています。蒸したキャッサバという芋を、細長い棒を使い、つきます。大変な作業ですが、女性たちが歌ったり、話をしたりしながら、楽しそうに作っている姿をよくみかけます。彼女らにとって、コミュニケーションをとる大事な時間のようです。ほかのガーナ料理も、私は大好きです。

FUFU

〈住居〉
  私の任地、タマレ市の近郊の村では、きのこ形をした住居が主流。ここに大家族で住んでいます。家畜(鶏やヤギ)の小屋や、食べ物を保管する倉庫のようなものがあったり、また、お墓も敷地内にあったりと、不思議な感じがします。


〈言語〉
  ガーナの公用語は英語。しかし、ほとんどの人は現地語で話します。村に行くと英語が解かる人は少なく、複数の村を巡回しながら活動する私にとって、現地語が理解できないと直接コミュニケーションがとれないので、今は毎日勉強中です。私の任地タマレの現地語はダバニ語が主流。


>学校での同僚の教育風景。英語を理解できる子供が少ない為、現地語で説明している。

あいさつや簡単な質問は返答できるようになりましたが、まだまだ・・・。それでも、私の言いたい事を理解しようと気長に耳を傾けてくれる優しいガーナ人。皆、会う度に少しずつ教えてくれます。それに応えられるように、努力していこうと思います。

〈衣服〉
  アフリカ特有の鮮やかな色がよく似合うガーナ人。男性の民族衣装は、写真のような形の服や大きな布一枚を上手に片側の肩にかけ全身覆う形が正装。女性の民族衣装は、様々な柄のプリント布や染め布、その他いろいろな(各地方で特有の種類がある)布で、美しく着飾ります。”お針子”達が手動ミシンで、せっせっと服を作る姿を町中でみかけます。オーダーメイドはお手頃な値段で作ってくれて、私も何着か作ってもらいました。

 また、女性は皆ピアスをしています。生後間もなく女性は皆、耳たぶに一つずつ穴をあけてピアスをつけるので、子供たちは私がピアスをしていないと「マダムは女じゃないの?」と不思議そうに言います。かわいいです・・・。

 この国に来て印象的なことは子供が多いことです。村に行って、子供が子供をおぶって世話をしている姿を見ると、昔の日本の風景はこんな風だったのかなあと思ったりします。子供は家の手伝いをよくしていて、学校に行く子と行かない子がいたり等、いろいろな問題はあるけれど、それでも村の子供たちは皆元気です。

ここガーナに実際に来てみて「途上国の人を救う」だなんて、今の私には言えません。なぜなら、あの笑顔に今、救われてばかりいるからです。

 また、動物の子供もたくさんいます。動物が身近なところにいる事にも慣れ、今はそれも癒しの一つになっています。しかし、家畜とはいえ、ほぼ野生化している動物たちはいたる所にいて、バイクに乗って道を通る時は要注意です。


 そして、もう一つ印象的なことは、頭の上に物をのせて歩く姿をよく見かけることです。町では売り子が、飲料水や食べ物や生活用品、とにかく何でも上手にのせて、バランスよく歩いています。いつも感心して見ています。私も何回か挑戦させてもらいましたが、まだまだ。


>子供が生まれると、近所の女性が集まって、食事を作って皆で食べたり、子供の顔を見に来たりする。名前もこの時に決めるそうだ。生まれたての赤ちゃんは、皮膚が白い!


 またガーナ北部のここ、タマレでは水が少なく、乾季には雨季に貯めていた水やため池の水は枯れてしまいます。何キロも離れた水のあるため池まで歩き、水の入った重いバケツを頭にのせ、一日何往復もする重労働を、村の子供から大人までが、生きるためにせっせと行います。大変な仕事ですが、そんな時でも声をかけると笑顔で話してくれます。


 そして、この国の人たちは、簡単に「ありがとう」と言いません。簡単な手伝いをしても何も言わないのです。はじめは、「あれ、おこってるのかな?」とか、「一言いってもいいよな・・・」と思ったりしました。彼らにとって、助けあうことは”あたりまえ”だという事に気がつくまでは。

この国に来て、上記で述べた、頭の上に物をのせて運ぶ姿は、よく見る風景。どんな大きいものも、重い物も、上手にのせて歩いています。はじめは、そのことだけがめずらしく感心して見ていましたが、よく見ていると、頭にのせる前後は必ず誰かが助けているのです。知らない人同士です。大人も子供も、オシャレして歩く若者も、誰に言われなくても、自然と手助けをして、何もなかったように去っていきます。手助けをして見返りを求めていた自分を恥ずかしく思いました。

〈活動〉
  私は、ギニアウォームという寄生虫の撲滅を目指して、ガーナ保健省とアメリカのNGO(カーターセンター)が中心となって行う「ギニアウォーム撲滅プロジェクト」に配属されています。タマレ市役所が活動拠点となっています。協力隊として派遣されるのは、私で2代目となります。主な活動内容は、地域住民に対して「安全な水」に関する教育やギニアウォーム予防のための啓発活動を行うというものです。

 ギニアウォーム(メジナ虫)という寄生虫の感染は、中間宿主であるミジンコを含む水を飲むことによります。体に入ったギニアウォームは1年かけて通常ヒトの皮下組織や結合組織に寄生し成長します。そして産卵のため皮膚を破って人体外に出現し、その際は激しい痛みを呈するというものです。


>ギニアウォームの処置。水に浸すと出てくる。この時に細長い虫が途中で切れてしまうと、体内から出てこなくなり、体内で虫が死に化膿して重症になる為、毎日、数センチずつ、ゆっくり少しずつ巻きとる。患者は抑制センター(病院)に入院し、子供の患者は激痛で泣きながら、この処置を受けるのである。

直接死に至るものでないことや、昔からあった病気であること等の多くの問題があり、ここガーナ、特に北部は患者数が多くなっています。現在では世界で最も蔓延している国となっており、ここ北部ではWHO、UNICF、EU、赤十字社や世界各地よりNGO等がいろいろな援助活動を行っており、減少傾向ではあるものの未だ撲滅には至っていません。

 撲滅するには感染経路を確実に止め、予防のための教育が大事になってきますが、これは啓発活動を地道にでも行っていくしかありません。また「安全な水」の供給も重要です。タマレの一部では水道が通っていますが、エネルギーの問題やいろいろな問題があり、不完全な面も多く、必ずしも安全とはいえない状況です。

またポリタンクに水配給車が来て水を入れる光景も町ではよく見かけますが、それはお金を払える家庭のみ。村のほとんどの住民は、ため池に行き、ギニアウォームになる可能性のある、安全ではない水を使うのです。いろいろな援助から、タマレでも井戸などもつくられてはいますが、乾季になると浅井戸は枯れ、雨季に貯めた水も枯れてしまいます。また、壊れて使われていない井戸や水道管を見ることもあります。

いろいろな現実を実際に見て、自分のすべき活動とは、自分のできる活動とは・・・と現在、活動について悩んでいる最中です。

 この国に来る前は、自分の自信のなさから、異文化での生活や活動に対して不安で仕方がありませんでした。ここに来て、自分の活動はまだまだなのに、ガーナの人達に助けられてばかりいます。今はただ、大好きなこの国の人たちのため、自分のできることを精一杯したいと思い、毎日過ごしています。

 3月に入りさらに日差しが強く、肌が痛く感じる日が続いていますが、ガーナ(タマレ)の暑さはこれからだと、ガーナ人は言います。暑さに負けず、自分らしく活動できるよう頑張ろうと思います。そして楽しみたいと思います。

ガーナより。
>ガーナの子供たちは、皆元気だ。このとおり・・・