帰国隊員報告          「りる」第14号より

                                                  グァテマラ    M.A.
                                                             平成6年度2次隊
                                    
野菜                                                              

 平成6年度2次隊野菜隊員として1994年12月より2年間中央アメリカに位置するグァテマラ共和国へ派遣されたAと申します。

活動は首都から55Km程離れたチマルテナンゴという地方都市にある国の農業試験場においてトマトとチレ・ハラペーニョというとうがらしの育種試験を行いました。グァテマラは国土の多くが高原地帯であり気候に恵まれ、コーヒーやバナナといって主要農産物の他に野菜栽培もさかんで、北米等に輸出もされています。

そのため試験場では一般的に使われている外国産の種子ではなく、農民のために安価で確実な野菜種子の国内自給を目標として実験を続けています。活動形態は試験場勤務型で、一般にイメージされる隊員活動とは異なり農民などに指導を行うというのではなく、現地の技術者と共同研究を行うというものでした。

具体的には、トマトはより収量の多い品種の育成を目指し試験場内で選抜してきた品種と他品種との交雑育種を、チレは均一な形で収量の多い品種育成のために選抜育種を行ってきました。

 育種は十年一単位といわれ、私は三代目ではありましたが前任者と一年程問があいてしまい全く別の材料でのスタートとなってしまったため、現段階で成果と呼べるものは残せていません。しかしすでに継続して2代の後任隊員が決まっており、彼らの帰国する頃にはなんらかの結果がでているのではないかと思われます。

また、人工交配や袋掛け等現地の技術者が知識として持っているが実際行ったことのない細かい作業を実施し、文章として残したことや、時間の都合で最初の段階しか参加することができませんでしたが化学肥料しか使っていなかった試験場で有機農業の試験的な農場作りのプロジェクトが現在も上司の人に継続されていることなどがわずかながらではあるが協力効果であったのではないかと考えています。

 私は新卒で協力隊に参加したため協力隊における経験が初めての社会経験となってしまい、日本の社会と比較することができず自分の思い込みで決断してしまったことがあったかもしれません。しかし大学で得た知識を活かし、何もない状態で自分がどこまでやれるかを試してみたいために協力隊に参加した私にとって、自分自身で考え判断する機会の多かった2年間の活動はすばらしい勉強の場であったと感じています。

 普段の生活においても、休みの度に誕生会や結婚式ですぐに集まる家族や親戚の深い絆に感心したり、東洋人蔑視をする人の中で差別される側の痛みというのも知りました。

 またグァテマラは昨年末政府とゲリラ間に和平調印が行われましたが、当事者の生の声を身近に聞くことができ、中米の歴史や深い民族問題について認識することができました。

語学に関しても同任地に日本人隊員がいたため、それほど上達したとはいえませんが、報告書や発表等も行う機会が与えられ、語学を学びながら現地の情勢を学ぶことができました。このように現地の人とはもちろん、友人として全国各地から集まった隊員とも交流することができた2年間はとても貴重なものであったと思います。

 今はまだこれから進む道を探している段階ですが、協力隊の経験を日本の社会において比較し、応用していくことが私には必要だと考えています。そしてまた、協力隊のOBとして今後も協力隊の性格を多くの人に伝える手伝いをしていきたいと思います。