現地隊員レポート         「りる」第39号より

                                                    ホンデュラス   N.H.
                                                             平成15年度2次隊
                                    
小学校教諭                                                                

 『ホンジュラス便り』
中米ホンジュラス
 日本にいてこの国の名前を聞くことはほとんどなく「どこにあるの?」という方が多いと思います。しかし青年海外協力隊の中南米派遣国の中では、累計隊員派遣数が1,2位にあがるほど関係が深い国です。

 私は首都テグシガルパから南東90キロに位置するエルパライソ県オロポリ市というところで「基礎教育総合強化モデルプロジェクト」のメンバーとして活動しています。このプロジェクトの目標は「教育環境の改善を通して、児童の留年率、退学率を減少させる」というもので、小学校教育(小学校教諭)、就学前教育(幼稚園教諭)、保護者へ教育の関心を高める(村落開発)、保健分野(保健師)がチームとなって、学校環境を取り巻く地域全体で基礎教育を支えようといったものです。

 これは、エルパライソ県グイノペ市では2001年から、オロポリ市では2003年から開始し、とにかく実験的にこの2地域で専門家ではなく隊員レベルで現場を見て、このプロジェクトの目標に近づけるよう、また問題点を解決できるような活動を見つけようといったものでした。

この重要なポイントとしてはその活動が、ボランティアの私たちが去ったあとでもそこの地域で根付いて続いていくような、現地の人でもできるものを探ること。そしてこの実験的な2地域で成功したもの。それらを一つのモデルとして、将来的には県レベル、ホンジュラス国レベルに持っていくというのが大まかなシナリオです。

 今現在は大統領選挙がある今年いっぱいまでを第一フェーズとし、来年からは第2フェーズで県レベルに広めていく運びになりました。しかしこの普及段階で、ホンジュラスにはたくさんの北米、南米、ヨーロッパなど、他国ドナーが同じような教育改善のプロジェクトを進めていたにもかかわらず、あまり普及しておらず、マニュアルもありますが活用されていない現状を踏まえ、第1フェーズの作り上げていく時点から、今後の普及方法を考えながら作っています。

例えば県教育長や県内の教育委員長などを集め、私たちの活動の進捗状況を随時発表しこのプロジェクトに興味を持ってもらうことや、今後もプロジェクトを推進してくれそうな県レベルの教育関係人物を職種ごとにカウンターパートとして選び、普及方法など常に現地の人を巻き込みながら決めていっています。そしてさらに普及時に現地の人がセミナーを行うことを前提にして、簡単な活動を紹介するマニュアルも現場で活動をしながら同時に作っています。

 私の堅い活動の話ばかりではあまりおもしろくないので、ここでホンジュラスの学校について日本と違う特徴的な点をいくつか紹介したいと思います。新学期は2月からで、学期は5つも分かれています。つまり約2ヶ月ごとに先生は成績処理をするために、それも先生自身が作成した試験を児童に与え通知表を書きます。最終的に学年末の追試試験後も合格点を取れなかった児童は留年となります。



ここホンジュラスの初等教育は日本と同じく義務教育であるため無償ですが、この留年といった制度が当たり前のようにあり、村の学校では学年が上がるごとに児童数は減少しているように見受けられます。その原因の一つに親の教育に対する関心が薄いことがあげられると思います。

毎年、新学期前にどの学年の児童であっても、親が学校へ児童の登録をすることになっています。そのため農業で十分生計が成り立っている村などでは、あまり学問に関心のない親や、また子ども自身も農業をする方が好きだからという理由などから親が途中で登録をやめたりするのです。

 学校の形態はほとんどが複式学級であり、1人の先生で6学年すべてを教える学校も少なくありません。日本のような単式学級は地方都市にあるぐらいです。就学時間は私の任地ではすべての学校が午前7時から12時までの午前中5時間で学校が終わります。

休み時間は1回のみで、時間はその日によってまちまちですがだいたい9時から30分間ぐらいあります。その間に貧しい地域の学校では「メリエンダ」とよばれる栄養を補うための「おやつの時間」があります。地域の保護者が他国ドナーから配給された米、豆、砂糖、油などを使った簡単な料理を作り子供たちに配ります。

もちろん土曜日は休みです。休みといえばそれ以外にも先生のお給料日には当たり前に休みになりますし、日本では考えられないようなビックリする点がたくさんあります。



 今年は4年ごとにある大統領、国会議員、市長の三大選挙の年で、11月には学校は修了しました。今は2月からの新学期、またプロジェクトの第2フェーズの開始を控え、準備などに終われる日々です。