現地隊員レポート             「りる」第67号より 

                                                    インド     太田 詩織
                                                             平成26年度2次隊
                                         日本語教育
   

『進化を遂げる国、インド』
 インドでの活動も折り返し地点を迎え、生活面や活動面でも困ることは少なくなってきました。そんな中、この場を借りて、私の活動先であるインドについて少し知ってもらいたいと思い、投稿いたしました。

 さて早速ですが、みなさんは、インドというとどのようなことをイメージしますか。残念ながら日本で報道されるインドに関するニュースはマイナスなことが多いように感じます。私もインドに来るまではそうでした。女性に対する性差別、大気汚染、強盗、職業差別などなど、考えれば考えるほど怖いイメージしか思い浮かびませんでした。

しかし、実際に行ってみると、そのようなイメージは全てくつがえされました。例えば、公共交通機関では、必ずと言っていいほど女性専用車両や女性専用席が用意され、女性が近付くと男性はすぐに席を譲ります。夜遅くなってしまうような仕事や男性との接触のある仕事には、女性は決して就けません。

帰りが遅くなってしまうようなことがあれば、何人ものボディガード(友人や親戚、近所のおじさんなど)が守ってくれます。このように女性を守るために国全体で動いているのです。大気汚染に関しては、死者や病人が出てしまうほどひどい状況ですが、インド政府も様々な対策を施しています。

例えば、今年の1月に実施されたのは、奇数の日には下一桁が奇数のナンバープレートの車が走り、偶数の日には下一桁が偶数のナンバープレートの車が走るという対策でした。というのも、インドは走っている車の台数が多く、マナーもあってないようなものなので、渋滞や交通事故が多発しているのです。

しかしこの対策により、大気汚染の軽減だけでなく、日々、人々を悩ませている渋滞の問題も解決しました。また、カーストと呼ばれる職業区分による差別もだんだん少なくなり、カーストを超えた恋愛結婚も可能になりつつあります。(これまでは、お見合い結婚が主流で、結ばれない恋人同士が無理心中を図るというニュースもよくありました。)

これは、これまでになかったコンピューターや携帯電話などが普及したことにより、新しい職業ができたからとも言われています。現在、世界第二位の人口をほこるここインドは、IT大国とも言われ、世界中が注目を集めています。

日本企業もどんどん進出し、それにともない日本食レストランや日本製の食品を扱ったスーパーマーケットはもちろん、日本人向けのホテル、居酒屋、カラオケなどが出来、日本人にとって困ることはほとんどありません。

 このように私のインドに対するイメージはがらりと変わり、これを日本の、世界の様々な人に知ってほしいと願っています。私自身、休みの日には、現地の友達と一緒に、ショッピングモールで買い物をしたり、ボーリングをしたり、カフェでゆっくり話したり、なんて日本と変わらない日々を過ごしています。

 ここまでインドの近代的な面を紹介しましたが、宗教や風習を大切にする昔からの文化は変わっていません。

 インドには、様々な民族の人々が暮らしています。つまり、様々な宗教、様々な言語(インド憲法では22の指定言語が定められています)が共存しているのです。広大なインドでは、東西南北各地で話されている言語、食事、習慣が異なります。さらに言うと、顔や体形も異なっているのですから、インドを一言で説明することは不可能です。

なので、私の任地である首都デリーに限って紹介させていただきます。デリーには、仕事を求めてインド中、さらには世界中から人々が集まってきます。したがって、街中で聞こえてくる会話のほとんどが英語であることもしばしばあります。宗教だって様々です。

ヒンドウー教が約80%を占めていますが、イスラム教、仏教、キリスト教、シク教、ゾロアスター教、ジャイナ教などなど、様々な宗教建築物があることはもちろん、休日も全ての宗教に沿って定められています。日本人がよくイメージしているターバン姿のインド人もここデリー周辺でよく見られます。

(ちなみにこのターバンを巻いているのはシク教徒だけであり、インド内では約2%しかいないとのデータも。それにしても、インド人目ターバンのイメージがあるのはなぜでしょう、、、)それだけたくさんの人々が共存しているのですから、食事も様々です。

インド各地の料理が食べられ、イタリアン、フレンチ、中華、ファーストフードなどあらゆる種類のレストランがあり、食事に困ることはありません。

そんな様々な人々が暮らすデリーですが、みんなが一体になる行事が1年に2回あります。1つは、毎年3月に行われるホーリーです、これは色かけ祭りとも呼ばれ、春の訪れをお祝いするお祭りです。この日ばかりは、大人も子どもも、職業も、人種もかまわず、色粉や水をかけ合い、みんなで楽しみます。

もうーつは、毎年10〜11月頃に行われるディワリです。これは、富と幸運の神様ラクシュミーのためのお祭りであるため、この時期に新しい家具や家電を新調したり、お菓子やプレゼントを親戚や近所の人々に配って回るというもので、ショッピングモールやマーケットはすごい賑わいを見せます。家々の電飾や、花火や爆竹も行われ、とても華やかかつ賑やかなお祭りで、インドの正月とも言われています。

 このように、猛烈な速さで近代化の進行しているインドですが、一方で、文化を大切にし、人々の繋がりを重んじる姿は今も昔も変わりません。他人に優しく、すぐに手を差し伸べ、助け合って生きているのは、インド全体どこも同じで、部外者である私を温かく迎え入れ、世話を焼いてくれる周りの人々には感謝の気持ちでいっぱいです。

私自身、休みを利用してインド国内を旅行しますが、広大なインドを制覇することは大変難しく、私を飽きさせることは決してありません。むしろ知れば知るほど、謎が深まるばかりで、私の探求心を煙らせてくれます。

北のヒマラヤ山脈近くの壮大な自然に囲まれた地域や、東に広がる砂漠地域、少し南に行けばボリウッド映画の有名な大都市やビーチリゾート、西には仏陀の生まれ過ごした優しい村々に出会え、南には海に囲まれた穏やかな地域。各地域でインドを垣間見ることはできましたが、まるでパズルのピースを埋めているかのようで、そのパズルを完成させるにはまだまだ遠い道のりのように感じています。

 このように、私がこれまでに感じたインドの魅力を紹介しましたが、ご理解いただけたでしょうか。

 ぜひ機会があれば、インドの地を訪れ、実際にその目で見、体験してほしいです。

 次回は、私の活動について紹介いたします。


聖なるガンジス川に祈りを捧げる人・人・人・・

道の真ん中に牛、でも誰もきにしない

みんな甘い物が大好き

一緒に撮ろうぜ

カメラを見ると近付いてくる子供たち

ヒマラヤの大自然