OB・OG活動     「りる」第46号より

                                                    カンボジア   Y.N
                                                             平成17年度1次隊
                                     理数科教師
                                                                


『桜町中学校で出前講座をしました』

 成田空港から東京都内までのバスの値段を聞いて、高さのあまり「えっ???」と息を呑んだり、見知らぬ子供に笑いかけるとその子供に不振な目で見られたり、何十分も自転車をこいでも誰も声を掛けてこないし、誰とも挨拶をしない・・・というカンボジアでは考えられなかった状況に戸惑いながらも、日本に帰国して早2ヶ月が経ちます。

 桜町中学校3年生240名を対象にカンボジアでの協力隊体験を話してきました。青年海外協力隊について、カンボジアの地理・歴史について、カンボジアでの協力隊活動について、そしてカンボジアの生活について話をしてきました。事前に学校の先生から、価値観の違い、文化の違い、援助について、生きることって何?ということを含めてくださいということだったので、そういう内容を含めたつもりです。生徒が240名と大人数だったということで、講演というかたちになりました。

 私は、長い巻きスカート(サンポット)とレースの上着(アウパッ)というカンボジアの衣装を着て行きました。カンボジアの服装で、日本で自転車をこいで行くことにすごく抵抗がありましたが、生徒達の反応を見てよかったと思いました。

生徒は衣装に大変興味津々でした。そして、久しぶりにクメール語で自己紹介をしました。発音がめちゃくちゃでしたが、久しぶりにカンボジア人になりきる機会ができたので、とても楽しかったです。

家族、従姉妹みんなで横になってお休み

 青年海外協力隊に関することや、自分が協力隊に参加した理由を少し話した後に、本題のカンボジアについて、写真を見せながら話しました。

カンボジアの歴史?

  カンボジアのポル・ポト時代の苦い歴史を紹介し、そのために、カンボジアが今陥っている状況、つまり、教育が不十分である状況について話しました。そして、そういう状況だからこそ、私はカンボジアで生物の実験を教えていたことを話しました。

歴史の話の時には、「日本がカンボジアと同じ状況に置かれたらどうする?」「日本中に勉強する人がいなくなったらどうする?」と問いかけました。「社会が成り立たない」と答えてくれる生徒がいました。人数と時間の関係で、全員の意見を聞くことができませんでしたが、1人1人心の中で考えてくれたと思います。私は、カンボジアの状況を他人事として考えてもらいたくないと思い、生徒に問いかけました。

援助って?私の活動は?

  私の赴任校を例にあげて、先進国の援助によって実験器具はたくさんあるけど現地の人は使いこなせていない状況、日本の資金援助の下で隣国のベトナム人が道路建設をしている様子を見せながら、途上国に対して行う援助のあり方に関して話をしました。生徒達が少しでも興味を持ってもらえたらいいと思います。私の活動に関しては、私が立てた方針〈生徒ではなく、先生に実験を指導する〉に関して話し、そのような方針を立てた理由は、

(1)2年間の活動終了後もカンボジア人が実験を継続して行うことを望んでいるから、 そして、
(2)カンボジアの先生のプライドを傷つけたくなかったから

ということを話しました。そして、実験に喜んで参加してくれた現地の人の協力のありがたさについて話しました。

子供部屋が無くてもお勉強

カンボジアの文化・生活?

  カンボジアの木造高床式住居の様子や、女性が料理をしている所、子供が手洗いで洗濯している様子、家族が一緒にざこねをしている様子の写真を見せながら、カンボジアの生活を紹介しました。「この様子は、皆さんの家と同じですか?」など問いかけたところ、違うようでした。また、手洗い洗濯をしたことがない日本の生徒には、同年代の子供がカンボジアでは手洗い洗濯をしている様子はどのように映り、何を考えたのでしょうか?家族が一緒に寝ている様子を見て、何を感じたのでしょうか?

洗濯は手で!

幸せとは?

  最後に、「物があるから幸せ?」「物が無いから幸せじゃない?」と問いかけながら、2年間のカンボジア生活で私が感じたことを伝えました。カンボジアというと、マイナスイメージを持たれる方が多いですが、そうでは無く、カンボジアには素敵な笑顔が溢れていることを伝えてきました。今回の私の話が生徒達にとって、何かのきっかけになればいいと思います。

第二の故郷カンボジア・・・

  帰国して初めて、大勢の前で協力隊体験をお話しさせていただき、自分自身にとって大変いい機会になりました。自分の中では、任地のカンボジアは日常生活になっており、日本人はカンボジアの何を知りたいのか分かりませんでした。しかし、誰かにお話をするということで、外からカンボアを見直すことができ、自身の心の中でカンボジア生活を整理することができたからです。

改めて任地の快適さを感じ、現地の人の温かさを感じましたが、一方で、彼らの人生の根底には苦い歴史が残っているということにも再度気付かされました。講演の初めに、「カンボジアと聞いて何を思い浮かべますか?」という質問を生徒にしたところ、「貧しい」「暑い」という答えが返ってきました。外観のイメージしかなく、人に対するイメージは持っていないようです。カンボジアの人に関することをお話できるのは、協力隊のような現地で生活をして人と触れ合ってきた人だけにしかできないことだと感じました。

私はもっとカンボジアの人のことをたくさんの方に伝えていきたいと思いました。そして、カンボジアにはマイナスの部分だけではなく、プラスの部分がたくさんあるということを知ってもらいたいと思いました。