現地隊員レポート             「りる」第55号より 

                                                       ケニア  M.F.
                                                             平成21年度1次隊
                                         観光業
    

「りる」第5回原稿

 香川県の皆様、こんにちは。いつもご支援ありがとうございます。今回はモンバサから約250km内陸に入ったところにあるツァボ国立公園についてお伝えします。

 先日ツァボ西・東国立公園一帯で行われた生態系(主に象)の一斉調査に参加してきました。IFAW(International Fund for Animal Welfare:国際動物愛護基金)と配属先のKWS(ケニア野生生物公社)との共同で3年に1度行われているものです。ツァボ西・東国立公園は合わせた面積が約20,812km2と日本の四国より大きく、ケニア最大の国立公園です。今回の調査対象範囲はツァボ西・東国立公園に加えてタンザニア側のムコマジ国立保護区なども合わせ、約46,437km2。

  写真1 この広大な範囲を50近くの区域に区切り

 約10機のセスナ機を利用し、6日間にわたって調査します。4人乗りのセスナ機に、パイロットと記録担当者が前方座席に乗り、後方座席には機体の右側担当、左側担当の調査員、がそれぞれ乗り込み、上空から象をはじめ主な動物が何頭いるかを数えます。

  写真2

 いくら低空飛行と言っても、点のように見える動物たち(写真2)の数を即座に判断し、また動物の種類を見分ける(普通のシマウマとグレービーゼブラなど)のはなかなか大変な作業です。パイロットも連日朝夜が明ける前から夕方暗くなるまで、お弁当持参での搭乗で、給油のために着陸する以外はほぼフル回転の様子でした。

  写真3 セスナ機の前でパイロットと一緒に

 調査本部はツァボ東、西国立公園に挟まれた野生動物保護区域の中にあるロッジに置かれていました。セスナ機が戻ってくると早速本部でデータの入力が行われます。記録係が携帯していたGPSのデータを地図上に落とし、調査員がカウントした動物のデータを入力していきます。毎日夜にはその日までの調査の成果と翌日の予定などを発表するミーティングが行われました。調査最終日にはKWSのダイレクターを迎えて閉会式が行われ(写真4)、今回カウントされた象の数が発表になりました。

  写真4

前回調査時(2008年)の象の数11,696頭に対して今回は12,572頭。かつてハンターによって激減(1988年の調査で5,363頭)した後、少しずつ増えてきています。ケニア全体の象のうち、30〜35%はツァボ国立公園地域で見られるそうです。タンザニア、スーダン、ウガンダからも関係者らが参加する大規模な調査でした。

  写真5

 滞在期間中にツァボ東国立公園のサファリに出掛ける機会もありましたが、ダチョウ、象、シマウマ、ジャッカル、インパラ、ガゼルなど、数多くの動物を見ることができました(写真5・6)。

  写真6

 また、国立公園内には象の孤児院があり、親を亡くした2歳〜5歳の子象が10数頭飼育されていました。飼育員は孤児院に寝泊まりし、象と生活を共にしています。朝4時と夕方には象と共に国立公園に出掛け、帰ってきたらミルクと餌を与えるのが日課になっています。ミルクには専用の哺乳瓶があり、外から帰ってきた象たちは勢いよくミルクを飲み(写真7)、エサをがつがつと食べていました。

  写真7

 人の手によって飼育された象は、どうやって野生に帰るのか、尋ねてみました。ある程度大きくなると、象は自然に象の群れに帰っていくとか。日々国立公園で象の群れと接しているうち、群れの象と親しくなり、孤児院に帰ってこない日があったりなかったりし、そのうち帰ってこなくなるそうです。内陸の国立公園はコースト地域と違う部分も多く、良い経験になりました。

 私の任期もあと数カ月を残すのみとなりました。最後まで健康に留意し、悔いの無い様元気に活動したいと思います。