現地隊員レポート             「りる」第76号より 

                                                    マラウイ   成瀬 美紀
                                                             平成29年度1次隊
                                         コミュニティ開発
   

「マラウイ人の性格分析」
 アフリカ南部、マラウイ共和国の成瀬美紀です。
 「○○人はこういう性格だ」と単純化することは難しいのに加えて偏見を生んでしまう可能性があり危険です。が、日本と比べてこういう人が多いよなぁと感じることは多く、今回はあえてそれを書いていこうと思います。

あくまでマラウイ人の一面であり、私個人が感じたことであり、マラウイ人のすべてではないことを記しておきます。みなさんが持っている「マラウイ人」、いや、マラウイ人と言われてピンとこない方は「アフリカ人」のイメージと比べながら読んでみてください。

シャイ?でフレンドリー?
日本人の肌色をした人は非常に目立ちます。遠くからでも大人子ども関係なくジーっと視線を投げてきて、近づきながらもジーっと見たまま、通り過ぎてから”How are you?”と声をかけてくることが多いです。ずっと挨拶をするかどうか迷いに迷って、最後に踏み切るのが遅い!とつっこんでしまいます。

 写真も撮って!と盛り上がる割に、いざカメラを向けると顔をそむけてしまったり、子どもは顔を手で覆ってしまったり。でも撮れたよ〜と見せるとわーっと取り囲んで騒ぎ始めます。

 地元のダンスミュージックが流れると、全員が歌い踊り始めるのかと思いきや、恥ずかしそうにNo、Noとうつむき加減で主張する人もいます。踊れるの?と聞いてみると「踊れるよ!」と。日本人もシャイと言われますが、意味合いがかなり違うようです。

 別のボランティア曰く、「人前で話すのは堂々としているように見える。でも、よくよく手元を見ると指がプルプル震えていることがある。緊張しやすいのかも。」「フレンドリーというか、他人にコンタクトを取りたがる。

物を落としたり道でつまずいたりすると、必ず知らない人からもソーリーと言われる。小さなソーリーを見過ごさない。でも知らない人ときっかけなくおしゃべりするのは別に得意ではない。公共のミニバスではみんなシーンとしている。でも共感できるようなことがあると、一斉にアーと言って他人とコンタクトを取り始める。」


参加者全員での結婚式ダンス

 何の用もなくても、Hiと言うだけのために朝5時に電話をかけてくることもしばしば。いつも電話かけるお金ないよーお金ちょうだいーと言っているのに、それにかかるお金はいいの?と謎は尽きません。ご近所さんに会うと、欠かさず「どこ行くの?」「何持ってるの?」「何食べたの?」と聞かれます。孤立という言葉はマラウイにはなじみません。

メンツをたてる
人の顔に泥をぬることは絶対にしません。人の誤りに一切言及しない分その場は平和に終わります。誰も嫌な気持ちになったり、反省をしたりすることなく。そして何の気づきも改善もなく。

 例えば、私が村で家計簿のつけ方を教えるワークショップを開いた場合。最後にはワークショップの内容や進め方がどうであったか、何を改善すればいいか講評をもらうようにしています。返って来るのはいつも「非常にためになった」「引き続き私たちの村に来てほしい」「私はあなたを誇りに思うし、みな感謝している」。

嬉しい気もしますが、それでは進歩がない。改善点は?と聞き直しても、「アローアンス(参加者に手当として配られるお金)が少ない」「ノートとボールペンがもっと欲しい」「村に井戸が欲しい」など、内容に関係のないことばかり。

 教員大学の講師をしている友人の意見では。「相手の失敗や間違いを指摘することをよしとしない。学生が模擬授業や発表を見て、はっきり面と向かって他人を否定しているのをあまり見ない。どんなに悪くても良いところを必ず言う。肯定的な意見のオンパレードなので、課題も出して、と促すとようやく出てくる。あ、課題も言っていいのか、と気づく。きっと小中学校でそういった視点を養う教育がされていないのだと思う。

たまに学生に厳しいこと言うと、泣きそうになったり自分の席に戻ってずっとうなだれたりしている。悪いところまで自己分析するのは1割くらい。マラウイの教育では誉める基準が低く、誉めすぎていると感じる。だから、この国の教育に、(ほめて伸ばしましょう!)の論理はこれ以上いらない。日本とは真逆の傾向。」

 また別のときには、マラウイの若者が日本の大学を受験するというので、オンライン通話での面接受検をサポートしたことがあります。横から様子を見守っていましたが、とても面接官の心をつかめたとは言えない受け答えをしており、こちらの気分は沈んでいました。優秀でモチベーションの高い学生なのに残念だ・・・と。しかし本人に感想を聞くと”It was perfect.I was not nervous.I did my best.(最高だったよ。緊張もしなかったし。ベストを尽くせたよ。)”との返答。


改善点を指摘してもらえなかったワークショップ

 悪いところばかりに目を向けてネガティブになるのも良くないですが、どう改善できるかという視点を持たないと、この国はますます世界から取り残されてしまうのでは、と強く危機感を覚えます。

 この特徴を逆手にとって、有効活用しているボランティアもいるようです。活動がうまくいかずに暗くなっているとき、マラウイ人に「今日の僕の授業どうだった?」と質問すれば褒め殺しシャワーを浴びられることは間違いないので、気持ちを自ら盛り上げて活力にすることもできます。

権力者、年長者を敬う
村長や先生、政治家など、目上の人には跪いて物の受け渡しや会話をします。私もただのボランティアですが、外国人=お金持ち=権力と結びつくようで、いつも過剰に敬われ、落ち込みます。地元の人と同じ目線で、と心掛けていても、あくまでも外国人なのだなと突き付けられます。

 一度、国の大臣が私の活動している村の視察に来るということで、200人以上の村人、現地の公務員たちが準備をし、大臣の到着を待っていました。高級車、高級スーツに身を包んだ大臣ご一行は予定より4時間遅れでやっと到着。大臣といえどこんなに遅れるのは村人に失礼だと私は怒っていたのですが、村人は「我慢強く待つのが敬意の表し方なんだよ(嫌だけどね)」ということでした。

 また、30歳の外国人が、50歳くらいのマラウイ人とタクシーの値段交渉できつい物言いをしていました。どちらも頭に血が上ってピリピリした雰囲気。するとマラウイ人が、「私はお前より年上だぞ!敬え!」と。この場面で年齢のことを持ち出すのか!とはっとさせられたことがあります。

 しかし、日本のように1歳でも年上とわかるとすかさず敬語を使うようなことはありません。親友だよ、と紹介された人がその人の5歳、10歳、20歳年上なこともよくあります。現地語のチェワ語には敬語の概念があり、英語よりは深みがありますが、日本語の複雑な体系に比べると至ってシンプルです。


実は緊張?人前でのスピーチ

 以上、3つの特徴を挙げてみました。日本では「外国人はオープン」「外国では自分の意見をストレートに言わなければならない」「外国では年齢は関係なくフラット」と語られることが多いですが、アフリカ、マラウイにはあまり当てはまりません。欧米文化よりは、マラウイ文化の方が日本に近いのではと感じる場面もあります。

 こんなマラウイ人の一人に、マラウイ人の自己評価をしてもらうと、「Hard working(勤勉)、Religious(信心深い)、Kind(親切)」とのこと。

日本にもわずかですがマラウイ人は住んでいます。ぜひ、これらのイメージを参考に、しかしとらわれることなくコミュニケーションをとってみてください。