現地隊員レポート    「りる」第36号より

                                                    マーシャル諸島   K.T.
                                                             平成15年度1次隊
                                    
小学校教諭                                                               


『マーシャルのクリスマス』

 2003年7月に私がマーシャルのウリガ小学校で働き始めてから早くも1年と5ヶ月が過ぎ、隊員活動も残すところあと7ヶ月となりました。

私の派遣地・マーシャル諸島共和国は日本から南東に約4000km、広い広い南太平洋に浮かぶ総陸地面積181平方キロ、人口6万人弱の本当に小さな国です。1200以上のサンゴ島からできており、島のほとんどは環礁といってドーナツのような輪になっています。そのため、島の幅はせいぜい500m、狭い所だと20mくらいしかなく、道の両側に海を見ることができます。
  海に細長く浮かぶ環礁

現在は日本であまり馴染みのない国ですが、太平洋戦争中は日本軍の占領下にあり、「草履」「電気」など日本語がそのままマーシャル語になっていることもたくさんあります。以前同僚が、授業中静かにしない子どもに「バカヤロウッ!」と怒鳴っていて、横で思わず吹き出したこともありました。

 マーシャルは人口の9割以上がキリスト教の国。そして12月、国中がクリスマスを控えてどこか陽気に浮き足立つ時期が今年もやってきました。街はどこもかしこもイルミネーションだらけ、一国の権威・国会議事堂までディズニーランドよろしくライトアップされています。銀行にはクリスマスを楽しむためのローンを組む人であふれかえり、ラジオは聖歌のオンパレード!まさに1年に1度の大イベントです。

 さて、そんなマーシャルに12月10日、一足早いサンタクロースがやって来ました。サンタと言っても日本のようにそりに乗ってやって来るわけでも、オーストラリアのようにサーフィンしながらやってくるわけでもありません。ここのサンタは真昼間にトラックに乗って堂々と登場します。(そこに乗っているのがサンタの赤い帽子をかぶっただけのその辺のおっちゃんだったりするのがいかにも適当なマーシャルらしくて笑えますが・・・)
  サンタトラック

このサンタ、何をするかと言うと、ゆっくりトラックを走らせながら周りに群がる子どもたちに飴をばら撒いていくのです。子どもは全速力で駆け寄り、その飴を拾い集めて満面の笑み、どこまでもトラックを追いかけて走っていきます。

 実はこの飴撒きサンタ、毎年恒例のマーシャル政府の企画。親からプレゼントをもらえない子どももクリスマスを楽しみにできるように、毎年やって来ては飴をばらまいていくのです。なかなか粋な企画だと思いませんか?

 国に産業と呼べるものがほとんどなく、国家歳入の60%をアメリカからの援助金で賄っているマーシャル。その使い道にも様々な課題が山積みではあるものの、こういう企画を見る度になんだかほのぼのとさせられます。

平均海抜は2m、あと何十年もすれば地球温暖化の影響で沈んでしまうかもしれない小さな国ですが、そんな小さい国だからこそ可能な国のあり方を垣間見たような気がしました。何事にものんびりおおらかなマーシャル人、それにイライラすることもありますがやはり私はこの国が好きです。
  生徒たちと <りる37号より>