現地隊員レポート             「りる」第65号より 

                                                    モンゴル     丸岡 猛志
                                                             平成26年度3次隊
                                         花卉栽培
   

『半年の記録』
 2015年1月14日、モンゴルの首都であるウランバートルにやってきました。冬のモンゴルは想像以上に寒く、生まれて初めてマイナス30度の世界を経験しました。また冬のウランバートルは寒さに加えて、石炭を炊く煙の影響で大気汚染もひどく、マスクをしないと外を歩くのも困難でした。

 しかし部屋の中はパールと呼ばれる集中暖房の設備があったので快適でした。常時25度ぐらいに保たれていたので、部屋の中では半袖でも大丈夫でした。でも外はマイナス20度が当たり前だったので、出かけるために5分かけて着込み、帰宅したら3分かけて着込んだ衣類を脱がなければなりませんでした。

 外を歩くと10分ぐらいで寒くなってくるので途中、スーパー等に立ち寄って温まってからまた歩くという繰り返しでした。また日没も早く16時ぐらいに暗くなり、日の出は8時ぐらいだったので、基本的に用事がなければ外を出歩くこともなく、快適な部屋の中でいる毎日でした。

 2月7日、任地であるドルノド県チョイバルサン市にやってきました。ここはウランバートルから北東方向に660キロ、飛行機で1時間半のところにある東部最大の街です。人口は約4万人で、モンゴルでは4番目の都市です。ノモンハン事件の舞台になったハルハ川はこのドルノド県にあります。チョイバルサンの特徴は山がなく地平線まで草原が続いていることです。

小麦などの農業生産も盛んで、地元には『ドルノド・ゴリル』という会社もあります(ちなみに「ゴリル」はモンゴル語で小麦粉です)。この会社の小麦粉やパン、麺などが町中どこに行っても買うことができます。

 2月19日から3日間、ツァガンサル(モンゴルの旧正月)がありました。基本的に日本のお正月とよく似ているのですが、ボーズ(小籠包に似たモンゴルの蒸し餃子)とアルヒ(モンゴル製のウォッカでアルコール度数約40度)を訪問者は飲み食いしなければならないという義務があります。

1日に何件もの家を回り、その度にボーズとアルヒを飲み食いするという光景は外国人からすると信じられないものですが、新しい年をみんなでお祝いしている一体感みたいなものを感じることができます。3日間、ボーズを食ベアルヒを飲み続けるのは正直、肉体的にも精神的にも楽ではありませんでしたが、これを通してモンゴル人との距離感が縮まった気がしました。

 3月2日から授業が始まりました。配属先の学校は技術専門学校で(学生約1000人、教職員約80名)、私は花卉栽培コースと野菜栽培コースの人たちを教えることになりました。1クラス約15名(15歳から20歳までの男女)、1年生と2年生、計4クラスを担当することになりましたが、私のモンゴル語力のなさからまともな講義型の授業はできませんでした。

だから最初は他の先生の授業を見学しながら、授業以外で日本語や折り紙、生け花を教えました(当地では切花が手に入らないので葉ものや枝もの、造花、折り紙を組み合わせて活けました)。また教室はパールの影響で暖かかったので室内栽培にも挑戦しました。プランターにホウセンカの種を植えたところ2ヶ月ほどで開花しました。モンゴルではパールがあるため観葉植物や鉢物を室内で栽培していることがほとんどです。

 4月に入り外での実習が始まりました。学校にはビニールハウス3棟(本当にビニールで覆われただけのハウス)と3反ぐらいの圃場があります。トラクターや耕運機のような機械がないので、すべて手作業で仕事をしなければなりません。

スコップで畑を耕し、古土をふるいにかけて再利用して使っています。灌水の設備も十分ではなくバケツリレーで水やりをしています。当地では雨が降ることは滅多にないので、また降っても断続的に降り続けることはないのでかなり土地は固く、耕すのが大変でした。

 4月上旬にハウスでコスモスとマリーゴールドの種を植えたところ6月上旬に開花しました。また4月末から5月にかけてハウス内及び圃場に野菜の種を植えました(種は中国産とロシア産)。当地には農薬が売っていないので無農薬で栽培しています。

ジャガイモ、ニンジン、キャベツ、たまねぎ、きゅうり、トマト、とうもろこし、スイカ、白かぶ、赤かぶ、レタス、ピーマン等を育ています。苗は売っていないので、どれも種から育てていますが、今のところ順調に育っています。私も個人的に他の隊員から貰った小豆を植えています。今のところ順調ですが、夏が短いモンゴルでは収穫できるかわかりません。

 5月に入りハウスや圃場での仕事に加えて緑化活動も始まりました。配属先の学校がエコキャンパスを作ろうとしているので、そのお手伝いをしています。今のところ、松を約50本植え、そしてキャンパス内に芝生の種を蒔きました。キャンパスは広いので管理するだけでも大変です。夏休みに入った今、学生が毎日水やりをしています。

 6月に入り外気温も平均的に20度を超えるようになってきました。今年はサマータイムがあるので(今だけ日本との時差がありません。サマータイムが終わると1時間遅くなります)、この時期のモンゴルは日照時間が長いです。日の出は5時ぐらいで、日没は22時ぐらいです。このベストシーズンを有効に使うべく夏休み返上で学生共々頑張っています。

 最後に花卉栽培の現状について言及します。当地では中国やロシアの種を買うことができますが、苗は売っていません(ウランバートルでは中国の苗が売っています)。6月まで外気温が安定しないので(暑い日もあれば寒い日もある)、外で種から発芽させて花を開花させるのが難しいです。今花壇を作っているのですが、開花した苗を移植するという方法が取れないので、ハウス内で育苗した苗を移植したり、芝生の種を植えたりしています。

 6月末現在、私が住んでいるチョイバルサン市内で花が咲いているのを見かけたことがありません。もちろんタンポポや雑草が花を咲かせているのは目撃しましたが、いわゆる季節の花が咲いている光景をまだ一度も見ていません。5月でも雪が降るような土地柄ですので、6月末でも本当に花が咲いていません。そんな環境の中で何とか花を咲かせようと日々いろいろなタネをまいています。