帰国隊員レポート             「りる」第70号より 

                                                    モンゴル     丸岡 猛志
                                                             平成26年度3次隊
                                         花卉栽培
   

『青年海外協力隊と私』

 私は2015年1月14日から2017年1月13日までモンゴル東部にあるチョイバルサン市で花卉栽培隊員として活動して参りました。その間私は香川県青年海外協力隊を育てる会の会報『りる』に5回寄稿し、事務局長から何度も文房具一式を送って頂きました。その文房具は現地で授業を行う際に使ったり、文房具を買えないような子供たちや勉強を頑張った子供たちにプレゼントしたりして大変重宝しました。改めてここに厚く御礼申し上げます。

 さて、本稿では3つのことについて言及します。1つ目は、私が青年海外協力隊に応募した理由、2つ目は、現地での活動、3つ目は、帰国後の現状と今後の予定です。

 私が青年海外協力隊に応募した理由は、中国の大学で日本語教師をしていた時、青年海外協力隊として派遣されていた一人の日本語教師に出会ったことがきっかけです。彼女の存在は学生の意識を変えました。中国の学生は自分の将来のために日本語を学んでいる人が多かったのですが、彼女が来たことによりボランティア活動にも興味を持ち始めました。そして将来、ボランティア活動をしたい、日中友好の架け橋になりたいという人を増やしました。私も彼女のような存在になりたいと思い協力隊を目指そうと思いました。

 青年海外協力隊には100を超える職種があります。当初私は「日本語教育」という職種で応募しようと考えましたが、倍率が高いのと、健康に問題(高血圧)があったので、あえて倍率の少ない「花卉栽培」という職種を選びました。52年の歴史の中で派遣されている人数が約60人と超マイナーな職種でしたが、香川県内の菊栽培農家で修行した実績が活かせ無事合格することができました。
日蒙友好関係の発展を願い

 モンゴルでは、現地の専門学校で15歳から20歳までの学生を相手に花卉と野菜栽培、植林、造園の指導をしました。募集時の要請では花卉栽培だけを教えると記載がありましたが、実際現地に行ってみると、植林と造園がメインでした。私はこれらの経験がほとんどなかったので、インターネットで情報を集めたり、隊員の中で詳しい人に聞いたりして勉強をしました。また、こういった大きな作業は自分ひとりでは実行することができないので、校長先生や他の先生との協力が不可欠でした。

 モンゴルではFacebookがとても人気があります。私は日本にいた時、実名を出すのが嫌だったのでFacebookのアカウントを持っていませんでしたが、モンゴルではモンゴル語のアカウントを取り2年間毎日更新し続けました。その理由は、校長先生や他の先生との協力が必要不可欠だったので、自分の仕事ぶりやモンゴルライフを見てもらい信頼関係を築いていく道具にできると考えたからです。お蔭様で、校内緑化、植林、公園作りにおいて一定の成果を出すことができました。特に植林では学校単位で一番木を植えたことからモンゴル政府から表彰を受けました。
 冬のチョイバルサン市

 毎日外国語で記事を書き、写真や動画をアップするのは想像以上に大変でした。最初はモンゴル語で書くのに苦労しましたが、1年が経過した頃からだんだん書くネタが尽きるようになりました。その時私が思ったのは、同じモノでも見方を変えることで色々な切り口が生まれるということでした。

例えば、国民食ボーズ(モンゴル風蒸し餃子)はどのレストランで食べるのが一番美味しいかという一般的な見方から、どの調味料を付けたら一番ボーズに合うかと考えれば少なくとも醤油、酢、ケチャップ、マヨネーズ、チリソースに挑戦でき5パターンできます。私はモンゴルで人間関係を構築する方法としてFacebookを始めましたが、2年間毎日更新する中で、モンゴル人の友達が増えただけでなく、ネタがない時、どうすればネタが作れるのかを学びました。

 帰国して一ヶ月が経過しました。帰国してまず思ったのは、「日本食は美味い」という事実です。本当にどこで何を食べても美味しく感じます。よく映画や小説の中で、おふくろの料理を食べて涙するシーンがありますが、2年間外国にいるとその感動を実体験できます。特にモンゴルでは滅多に食べられなかったお寿司やお刺身、もちろん香川県人として讃岐うどんを食べた時、涙腺が緩みます。
 ブリヤート族の民族衣装

 JICAボランティア事業の目的は3つあります。1つ目は、開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与、2つ目は、友好親善・相互理解の深化、3つ目は、国際的視野の涵養とボランティア経験の社会還元です。1つ目と2つ目は、花卉や野菜栽培、植林又はFacebookを通じて行ってきました。帰国後は、その経験を還元していくことが求められます。

幸いJICA四国の方から声を掛けていただき1月30日に香川高等専門学校詫間キャンパスにて出前講座を実施する機会を得ました。国際理解初級という難しいテーマでしたが、モンゴルで撮った動画や写真を用いたり、○×クイズを使ってモンゴルへの関心と興味を引き出そうと努力しました。学生の皆さんが熱心に聞いてくれたので、本当に出前講座に行って良かったと思いました。またこのような講座や講演依頼があればぜひ参加したいです。
 学校の先生たち

 転職エージェントを通じて香川県にある某企業様から帰国したらぜひ会いたいというオファーがあり、帰国後面談に行ってきました。本当に中国で働いた経験や協力隊での活動を評価していただき内定を頂くことができました。私は今まで県外や海外で働いていたので今後、地元の企業で働けるのが楽しみです。

 帰省して、香川県でも外国人旅行者や外国人技能実習生が増えたと実感しています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて益々外国人の数が増えると思います。JICAボランティアはこれまで約5万人が色々な国に派遣されているので、色々な国の言葉を話せる利点があります。またその国の文化や考え方も熟知しています。協力隊経験が活かせる場は企業や自治体だけでなく、我々の身近なところにもあるのだということを忘れずにしっかり社会に還元していきたいです。


同僚との別れ

学生達からの送別品