現地隊員レポート             「りる」第55号より 

                                                       モンゴル  T.T.
                                                             平成20年度3次隊
                                         養護
   
        

モンゴルより現地レポート

 2011年1月、私は2年間の任期を無事全うし香川に帰郷した。協力隊を育てる会の皆様から現地に届く定期便は活動の原動力として支えていただいた。心からお礼申し上げます。

 私の任務は、首都ウランバートルにあり障がい児だけを受け入れている第10治療保育幼稚園という国立の機関で現地人と一緒に働きながら日本で実施している特別支援教育の指導内容とその方法や社会福祉制度について紹介することだった。

 セミナー風景 障害とは何か?について考える教師・保護者・学生を対象にしたセミナーの様子

 活動を進める上ではコミュニケーションに大変苦労した。この困難は自分のモンゴル語力の未熟さ言語の違いによるものと思っていたが、次第にお互いの国の環境や思考の土壌の違いによるものだと感じるようになってきた。つまりコミュニケーションの基礎は言語以上に長年培ってきた生活環境が深く影響していることに気がついた。それからは彼らの文化を知ること受け入れることに努めた。時間のある限りモンゴル人と寝食を共にし、彼らが好きなカラオケ・ダンス・お酒にとことん付き合うようにした。この3つは私の苦手分野だったが意外にも楽しめた。

 クリスマスカード作り

 彼らと私の「違い」を発見するたびに「面白い」と感じるようになった頃には、コミュニケーションの障害は少なくなった。

 授業風景 「家で何したのかな?」昨日家で何をしたのかを絵力ードを用いて発表している。

 モンゴル人は滅多に「ありがとう」を言わない。私が体調を崩した時、訪ねて来てくれたモンゴル人の友人に、来てくれてありがとう、果物の皮を剥いてくれてありがとう、と彼女のひとつひとつの好意に対して私は嬉しくて無意識に「ありがとう」を言っていた。すると彼女から「何回も言わないで。当然のことをしているのだから」と本気で叱られた。親しい間柄で「ありがとう」は、水臭い、よそよそしいと感じるらしい。

 モンゴルは応募時の希望国には入っていなかった。けれどもこれも何かの縁と思い飛び込んだ場所で、期待以上の経験ができた。順調な2年間ではなかったからこそ、日本や自分について多方面から考えることができたし、国境を越えて生涯の「友」「家族」となる人らに出会えた。今後も、この経験を糧に常に目標をたてて精進していきたい。