現地隊員レポート             「りる」第51号より 

                                                       モンゴル  T.T.
                                                             平成20年度3次隊
                                         養護
   
                                                       モンゴル  A.T.
                                                             平成20年度4次隊
                                         PCインストラクター
     

 

『サインバエノー!』

 青年海外協力隊を育てる会の皆様、香川の情報誌や文房具等を送ってくださり、いつもご支援ありがとうございます。

 現在、モンゴルには香川県出身者が2名います。平成20年度3次隊、養護隊員で派遣されたT.T.とその3ヶ月後の平成20年度4次隊、PCインストラクター隊員で派遣された高橋梓です。お互い会ってびっくり、面識こそありませんでしたが年の差一歳、共通の知人がたくさんいたことから地元の話に花が咲きました。心強い仲間です。郷土の味を!と一緒に手打ちうどんを作ることも。モンゴルに出回っている小麦はほとんど強力粉だそうで、小麦の成分が日本のものとは異なり、食べなれた「さぬきうどん」の再現には至りませんでしたが、それに近いものが出来上がり懐かしい味を楽しんでいます。

 任地は、T.T.は首都ウランバートル(以下UB)、高橋はUBから長距離バスで2時間ほどのバガノール地区という町でそれぞれ活動しています。

 今回は、二人が感じたモンゴルの印象、UBとバガノールの生活の様子を中心にお伝えしたいと思います。モンゴルについて読者の皆様の興味が深まり、機会があれば足を運んでくださると嬉しいです。

【UB】
  モンゴルに赴任して、約半年が経ちます。赴任したのは1月で、モンゴルでも一番寒い時期でした。身体の芯までジンジンするマイナス30度の世界を体験、アイスリンクのような道。モンゴル=大草原というイメージをもたれている方が多いと思いますが、そのような景色は幻か?!と思ったくらいです。

 10月には積雪がみられます。

 6月から8月くらいがモンゴル人も大好きな夏の季節。小鳥が元気に鳴いて朝が来たのを知らせてくれますし、人通りが少なく排気ガス等でうす暗かった冬の街も、夏になると青々として賑わいを見せています。

 モンゴルの人口240万人(2007年度統計)の約40%がUBで生活しているそうです。マンション、ショッピングセンター、飲食店がたくさん建っています。それらは極中心部に限ったことでバスに乗って30分ほど外へ向いて進むと、ゲル(モンゴルの伝統的な家)の集落を見ることができます。UBの人口の約60%はゲルに住んでいるそうです。

 夏に訪れたモンゴル西部の町にてカザフ族家族と。

 モンゴル料理は、基本的に肉が中心の料理。よく使われるのは羊で、他に牛や豚、鳥、馬、山羊、酪駝(らくだ)の肉も食していて売られています。日本では、独特な匂いから羊肉を好んで食べていませんでしたが、モンゴルの肉はおいしいと思えるようになりました。

 中国、韓国産が多いですが、野菜も売られていますし果物も豊富にあって、食事には困っていません。食材の豊富さはUBならではかもしれません。食材に限らず日用品も充実していて、案外なんでもあったというのが正直な印象です。ロシア語表記、韓国語表記はもちろんのことまだまだモンゴル表記の読めない品物が多いけれど、パッケージの絵を頼りに「あれかな?、これかな?」と想像して買っていろいろ試してみるのが生活の楽しみの一つになっています。

 同僚たちと訪れた田舎にて。家畜をさばく作業は男性のみが出来る、神聖な仕事。大地には、一滴の血も落とさず解体します。

 活動に関しましては、モンゴルで唯一、障がいのある子どもを受け入れしている国立の第10治療保育幼稚園というところで活動しています。モンゴルでは、私自身が障がい者です。とくに言語に障がいがある人の気持ちがよくわかります。相手の言うことが分からず、自分の伝えたいことが伝わらず、コミュニケーションの難しさを身をもって経験しています。それはマイナスなことではなくて、そこから子どもとの関わりのヒントも得ています。

 活動はまだ始まったばかり、文化や習慣の違いからくる目がテンの出来事が多々ありますが、「視点」は「始点」という日本の恩師の言葉を胸に、いろんなモンゴルを見て、感じ、気づき、一歩一歩前へ進んでいきたいと思います。(T.T.)

【バガノール】
  ウランバートル市の特別区バガノール。UB市の一部ですが、市街地から東へ135キロ、草原を抜けた飛び地にあります。UB市街を「ホト」と呼び、地元とは区別している様子。大きすぎず小さすぎず、程よくのほほんとした空気が漂っています。町のメインストリートは、バスの到着する区役所前から病院までの約300メートル。車道は片道一車線、交通量もUBに比べ格段に少なく、市街地では寿命が縮むほどいつもドキドキする道路の横断も、ストレスフリー。まれに馬で横断している入を見られることも。方向音痴な私には嬉しいコンパクトさです。ちなみに、私の住んでいるアパートの裏手にある小学校のグラウンドの向こうはもう草原。子どもたちの遊び場は無限大ですね。

 のんびりとした町。駐車場で草を食べるウシの姿も。

 また、バガノールは石炭の山があることでよく知られている町。UBからの道中でも採掘場を眺めることが出来ます。町には炭鉱関係の仕事に就いている人々とその家族が多く暮らしています。人口2万人あまりの町に、5つの公立学校が合併して出来た12年制の教育統合学校があります。私の活動先でもあるこの学校は午前・午後の2部制で、小中高生合わせてなんと5千人以上が通っています。さらに私立学校も小さいながら2校あり、幼稚園児などの未就学児も合わせると町中子どもだらけ。住んでいる団地からも絶えず子どもたちが元気にはしゃぐ声が聞こえてきます。

女性も若くして子どもを生むので、27歳の私には数人子どもがいてもおかしくないそう。同僚にはいつも「なぜ子どもがいないの?」と真顔で聞かれます。ちなみに未婚で出産する人も多く、「結婚しているの?」と「子どもは何人いるの?」はまったく別の質問だったりします。ちょっとややこしいですね。

 カザフ族の踊り子の民族衣装を着せてもらいました。

 生活物資が想像以上に豊富なUBに比べると格段差はありますが、日常生活に必要な食品や物品の調達にはそんなに苦労はしません。小さなスーバーマーケットもいくつかありますが、地元の人の多くは個人商店で店員さんと対面しながら「あれください」と言って買い物をしているようです。新鮮な牛乳やヨーグルトをミルク缶やバケツで買いに来る人も。牧畜の国モンゴルらしい光景です。ちなみにモンゴル人はお肉や乳製品をよく食べる食習慣からか、手足が長くスタイルの良い人が多いんですよ!町の生活には社会主義時代のソ連の影響も残っていることもあり、顔つきは日本人と同じですが、アジア人の顔をした西洋人、といった印象も受けます。

 PCインストラクターとして配属された活動先の学校は、赴任してまもなく学年末試験が始まり、子供たちは6月から3ヶ月の夏休みに入ってしまいました。もちろんその間PCの授業もなく、自由に使える時間がたくさんあるので、夏休み中生徒たちに日本語を教えている先生のお手伝いなどをして過ごしました。9月から新年度がはじまり、やっと本格的な活動スタート。しかしやはり何事も思い描いていたようにはなかなかいかないもの。

 モンゴル人はダンスが大好き。みんなちゃんと踊れます。

10月〜11月には新型インフルエンザが流行し、一ヶ月以上学校を閉鎖するという緊急事態宣言が出てしまい、またひと休み。なかなかペースをつかめずにいます。活動そのものに関しても、新規派遣ということで私自身も学校側も、ボランティアという存在をどう活用すればいいのかお互い手探りな日々です。まずは小さな目標をこなしていくことから、自分らしく頑張って行きたいと思います。(高橋 梓)