現地隊員レポート             「りる」第52号より 

                                                    ニカラグア  K.O.
                                                             平成20年度2次隊
                                         小学校教諭
    

 

『ニカラグア活動報告U』

 皆さん、こんにちは。香川県の協力隊を育てる会の皆様、いつも支援して下さりありがとうございます。

 日本は今、暑い夏の頃でしょうか。ここ中南米・ニカラグアは雨季に入りました。カラカラに乾いていた大地も久しぶりの雨で、一面緑になり、牛や馬が嬉しそうです。葉っぱの緑に雨の雫がキラリと光り自然の美しさをさらに感じます。

 校内研修

(1)雨季
  そんな雨季が始まりましたが、聞くところ、5月から8月にかけては、集中豪雨と雷が続き、9月10月は、ほぼ毎日雨と雷だそうです。確かに、集中豪雨と雷はすごいです。家の前の道はすぐ川になり、雷も日本で聞いていた音よりも何倍も大きく、爆弾が落ちたのかと思うくらい激しいです。困ることは、その雨・雷のせいで電気がなくなることです。最近は、ろうそくでの生活時間が少し増えてきました。

 このような経験を通して、日本の道は水はけがいいんだなと気づいたり、昔の人はこのろうそくの灯りで勉強したり生活していて大変だっただろうなと感じています。

 雨季に入って困ることがもう一つあります。それは、虫の大量発生です。特にハエが異常に増えました。町には、ゴミや犬・馬の糞がたくさんあります。雨で全てが一緒になって流れているのですが、それは、町中バイ菌だらけということです。蚊やハエも増え、マラリアやデング熱が流行るのも納得できます。

 ここでの生活で一番慣れないのは、大人も子供もゴミを平気でポンポンとどこでも捨てていくことです。学校も町も本当にゴミだらけです。虫も集まってくる訳ですよね。この問題に対して、少しずつですが取り組み始めました。それは、次回お話したいと思います。

(2)活動
  ニカラグアに来て、早9か月が経ちました。早9か月と言いましたが、実際、時間はゆっくりと過ぎ、時間のルーズさ(1,2時間待たされるのが常)、言葉の壁等、悪戦苦闘の毎日でした。そんな中、算数教育の授業の改善のため行った活動があるので紹介したいと思います。

*研修
  今抱えている問題の一つに、教師の内容理解不足があげられます。実際、教師が間違って教えている事も多々あり、それに気づかないのが現状です。また、自分の学年のことしか教えられない教師が多いこともニカラグア教育事情の特徴です。そこで、少しでも内容理解ができるよう二つの研修を行いました。

 算数研修会(1)

(1)チナンデガ市内の5・6年生担当教師対象に面積・体積の研修
(2)面積について校内研修
  皆さんは覚えていますか?三角形の面積の求め方?体積の求め方?研修の初めにこのような簡単なテストをしたのですが、解けたのは数人でした。そもそも体積って何?といった感じでした。

 そこで、ちょうどよい形をした調味料を使い体積ってどんなものか学び合いました。ニカラグアの人は、大人であっても、知らない事を学ぶ時、本当に子供のようなキラキラした眼をして楽しそうに学んでいました。最後に最初に行ったテストを再度解いてみると、ほとんどの人が解けるようになっていました。

 研修後、「ありがとう、また研修してね。」という声を多くいただき、言葉の壁で悩み、不安だった私は、ほっとしたのと、うまくできなかった事に対する悔しさと様々な思いでいっぱいになり涙がこぼれました。

 しかし、今まで授業観察が主だった私にとっては、これらの研修は大きな一歩でした。

 算数研修会(2)

*公開授業
  日本では、自分の授業を他の先生に見てもらい、より良い授業を行うためにどうすれば良いかという話し合いの機会があったり、他の先生の授業を見て、教師としての眼から学ぶ事、子供としての眼から学ぶ機会があります。ここニカラグアではそのような機会がありません。なので、授業の工夫に悩んでいたり、授業の改善がされにくい状況にあります。

 私の任期は2年です。私が去った後でも、教師自身で切磋琢磨していける機会になればと思い公開授業を紹介し、行いました。

 JICAの援助でホンジュラスでの教育研修に参加できた先生に授業者、司会者になってもらい行いました。彼らは、研修後、モチベーションも高く、日本の教育スタイルに高い関心があり、自分が良いと思うことは取り入れていました。

今回のポイントは、授業の流れと黒板の使い方でした。先生によっては、宿題の確認だけで授業が終わったり、先生の話で90分終わったりしていたので、授業には、導入・展開・まとめがあるんだよといった事を知って欲しかったのです。板書の仕方も、こっちの先生は、真ん中に大きく書いてすぐ消す、いろいろな所に書いて後で見るとごちゃごちゃで分からないといった仕方だったので、少しでもこのような書き方もあるんだよと教えたかったのです。

 公開授業(1)

 授業は、授業者はかなり緊張していたと思いますが、流れがあり、板書も過程が分かり良かったと思います。しかし、その後の話し合いで、「私はこうするから。このやり方はできない。」「私の学年は、学習量が多いから、何回も消さないと書ききれない。」等、改善のための話し合いができませんでした。プライドの高い先生も多いので、なかなか聴く耳を持ってくれませんでした。

 本当は、自分の引き出しを増やして欲しかったのですが、その思いが伝わりませんでした。

 しかし、公開授業の次の日、隣のクラスの先生が早速、板書の使い方を真似してくれていました。私はとても嬉しく、その先生を大いに褒め、そして、公開授業の授業者にもその変化を伝えました。授業者もやった!といった感じでした。

 話し合いではうまくできませんでしたが、一人でも授業を改善してくれた先生がいた。その事が、次に繋がる自信になりました。うまくいかない日が多々ですが、一歩一歩進みたいと思います。

(2)環境フェスティバル
  6月上旬、環境フェスティバルが行われました。ニカラグアの協力隊員も参加し、地元の中高生と共に、ゴミ捨てやめよう!運動とよさこいソーラン節を踊りました。

 自分たちの町にあるゴミの様子、ゴミが土に変わるまでにどのくらいの時間・年数がかかるのか、ゴミを捨てることによって、どのような影響がでるのか等をパネル展示し、地元の学生・市民に訴えかけました。動物や人間、地球に及ぼす影響を知って、ゴミ捨てをしないと約束してくれた人々が約700人いました。もっともっと増えるように今後も活動していきたいと思います。

 全国環境フェスティバル(1)

 地元の青年部とともに踊ったよさこいソーラン節!私も初めて踊りました。この日に向けて練習をしていたのですが、しゃがんだり起きたり、けっこうハードな踊りでかなりの筋肉痛になりました。しかし、地元の青年たちは、自分たちの踊りと全く異なる踊りに興味津津で、「どっこいしょ!どっこいしょ!」「そーらん、そーらん!」という掛け声がとても気に入ったらしく、大声でいいながら嬉しそうに踊っていました。

 当日も、心ひとつに踊りきり、大きな拍手を頂きました。その後も、町で会った知らない人にも、「あの踊り良かったわよ。」と声をかけられたり、学校の子供にも、「今度教えて。」と言われるようになりました。

 日本の踊り・心意気!が伝わって嬉しく思います。

 全国環境フェスティバル(2)

 ニカラグアでは、遠くて、中国と思われている日本。これからも、少しでも、日本のこと、日本のよさを伝えていければなと思います。
(平成21年6月に寄稿いただきました。)