現地隊員レポート             「りる」第56号より 

                                                    パナマ    A.Y.
                                                             平成22年度3次隊
                                         村落開発普及員
    

 

『栄養改善から生活改善を考える』

 中米にあるパナマ共和国にて活動をはじめ、5ヶ月が経とうとしています。私は任地であるエル・カカオ村に住み、主に配属先の環境庁が支援している農民グループの生活改善を目指し活動しています。今回は、栄養レシピ講習会の報告と今後の活動予定や活動の中で気づいたことを報告させていただきます。

 生活改善の活動の一つとして、5月、6月に3つのグループの女性や近所の女性達と一緒に豆乳、トマトソース、野菜ごはんを作る栄養レシピ講習会を実施しました。この3つのレシピは、知り合いになった保健省の方から情報提供してもらった中から女性達が最も興味があるものを選びました。女性たちの栄養や食事への関心はとても高く、いつも同じ食材で、同じような調理法しか知らないから勉強したいと話してくれます。

 また、パナマでは、主食である米やイモ類、肉を中心に調理され、一般的に野菜を食べることを好みません。スープはいつも肉とイモ類が主で、玉ねぎやコリアンダー、セロリなどで味をつける程度です。村になっているマンゴーやオレンジなどのフルーツ、豆類を食べているのでビタミンCやたんぱく質を摂っていると言われているものの、ビタミン・ミネラルが不足し、炭水化物と脂質が多いため、栄養バランスがあまり良くなく、どちらかというとお腹を満たすための食事だという話を保健省の方からも聞きました。

 おからトルティーヤを作っているところ

 栄養レシピ講習会当日は、女性たちにレシピを実際に作ってもらい、試食をしてもらいました。中には恥ずかしがってなかなか参加しようとしない女性もいましたが、少しずつ声をかけながら、準備をしました。一番好評だったのは野菜ごはんです。野菜ご飯は、ご飯と一緒に、ピーマン、たまねぎ、ねぎ、コリアンダー、セロリを入れて炊きます。また、キャッサバの葉はキャッサバよりもビタミンを豊富に含んでいるということを保健省の方から教えてもらったので、キャッサバの葉も細かく切って野菜ごはんに混ぜてみました。

キャッサバの葉を使って料理をしたことはないということで、みんな驚いていましたが、身近なところから栄養が摂れるということを知ってこれから使ってみようと話してくれましたし、素材が身近なものばかりなので、これなら家でも作れると言ってもらいました。
  豆乳に関しては、好き嫌いが分かれましたが、中には大豆を育てて今後も豆乳を作り、行く行くは村人たちに豆乳を販売したいという意欲的な女性もいました。また、子どもたちのために豆乳を作って飲ませたいと話してくれた方もいます。

パナマでは大豆はあまり知られていませんが、保健所でお年寄りの方や子どもを対象に豆乳が無料で配布されていたり、大きなスーパーに行くと豆乳の粉が売っていたりします。

健康に関心の高い人は知っていますが、どうやって手に入れるか、どうやって調理するか、またどのように育てるのか知られていません。今後は大豆に関心の高いグループを対象に、大豆栽培を行い、収穫後は大豆レシピ講習会を開催したいと考えています。

 子どもたちに大人気の豆乳(小学校の台所を借りて栄養レシピ講習会を開催)

 また、豆乳を作る上で出てくるおからは小麦粉・卵・塩少々を混ぜてこね、トルティーヤのように薄く丸くし、中にチーズを入れて揚げたり、焼いたりして食べました。これは、栄養講習会に参加してくれた女性たちとその場で一緒に考えながら作りました。パナマでは日常的にトウモロコシの粉からトルティーヤを作って朝ごはんなどに食べているので、女性達が率先して考え作ってくれました。日本とは違ったおからの活用法を教えてもらいました。

私からレシピを伝える場だけでなく、女性達も一緒になって考えてくれたことが嬉しく、また、一方的に伝えるのではなく、村の方々の好みや食習慣に合わせたものを考えていかなければいけないことを学ぶ機会になりました。

 まだまだスペイン語が不十分であるため、私自身料理をしながら説明することが大変難しく、本当に参加者にとって価値ある講習会になったかどうか不安ではありますが、カウンタパートや参加者にも助けてもらいながら、無事進めることができました。1回きりの講習会で終わるのではなく、継続的なフォローや違うレシピ講習会の開催も考えていきたいと思っています。

 みんなで料理準備中(女性メンバーのお家を借りて開催)

 今後は、20の農業グループのうち、5つグループを選定し、これらのグループをモデルグループにするために活動することにしました。5つのグループによって状況や参加者、要望はそれぞれですが、主に

(1)栄養レシピ、野菜・フルーツを使ったお菓子作り、
(2)栄養価の高い野菜の普及、
(3)台所の改善(改良かまどや食器棚作り)

を行っていく予定です。活動をしていく上で、1つ1つの活動が単発で終わるのではなく、継続した生活改善活動であることを意識してもらうこと、できるだけグループの女性たちから生活改善につながるアイディアや意見を聞きだし、一方的に自分のやりたいことをやるような活動にはしないようにすること、カウンターパートや村の人々、協力隊やSVの方、他省庁の方々などたくさんの方に相談し、知恵やアイディアをいただきながら残り1年6ヶ月、エル・カカオ村の生活改善に少しでも役立てるようしっかり活動していきたいと思っています。

 メンバーの家で採れたコーヒーを豆乳と一緒に試飲