現地隊員レポート             「りる」第59号より 

                                                    パプアニューギニア  T.I.
                                                             平成22年度3次隊
                                         コンピュータ技術
    

 

『部族社会から学ぶコミュニティの活性化』

 私は今、パプアニューギニアという国にいます。
 パプアニューギニアはオーストラリアのすぐ北、インドネシアの東に位置する人口約700万人の国です。

 赤道にほど近いこの国は、年から年中暑い日が続き、雨期と乾期を繰り返します。

 日本とは縁が深く、太平洋戦争時には私が今住んでいるラバウルという街を拠点に連合国軍と戦ったという歴史もあります。

 古くはイギリス、ドイツ、独立前はオーストラリアの植民地としての時代を経て、1975年9月16日に独立しました。

 独立してまだ40年にも満たない新しい国ではありますが、その文化は私たち日本人からは想像もつかないほど独特なものになっています。

お隣さん。普段は離れて生活していますがとても仲の良い家族です。

 その独特な文化を語る上で欠かせないのは、なんといっても「部族」の存在です。

 800以上の部族が独自の言語や文化を保有し、発達させてきたのです、

 つまり一つの国に800以上の言語と文化が存在しているのです。

 私たち目本人のように国民全員がーつの言語を使い、文化を共有しているわけではないのです。

 共通語はありますが、奥地に行けばその共通語が通じないということもざらにあります。

 パプアニューギニアは国と言うよりは「部族の集合体」と言った方が実態に合っていると思えるくらい、それら部族が織り成すコミュニティの内部には強力な結びつきがあります。

 同じ部族であれば持っている人から食べ物をもらったり、家族じゃなくても家に泊めてあげることが普通なのです。

 私たち日本人のそれとは一線を画するコミュニティが存在するのです。

ご近所さん。同じ部族で家族同様の結びつきがあります。

 そういう部族社会の片鱗に触れながら毎日生活していると、今後の日本におけるコミュニティのあり方について考えさせられます。

 少子高齢化がますます加速する日本では災害のあるなしにかかわらず、安心して日々生活していくためには、生活の基本単位が家族では不十分になってきているのではないでしょうか。

 パプアニューギニアのように部族という強い仲間意識がない日本では、いかにして地域社会と強い結びつきを作っていくかを考えなくてはなりません。

 では、なぜ同じ部族だと仲間意識が生まれるのでしょうか?

 それはきっと、同じ部族だと文化が共有されていることから、他の部族とよりもコミュニケーションが容易だからだと思います。(何分パプアニューギニアでは部族が違えば言葉が違いますから、容易というよりは可能か不可能かというレベルの問題になります)

そこから学べることは2つあります。

1:コミュニケーションが取れて初めて連帯感が生まれる。

2:文化が共有されればコミュニケーションがしやすくなる。

以上2点を踏まえた上で、私が考えるコミュニティを活性化する方法は「定年後に学べる場を提供すること」です。

 義務教育時代から40年も経てば、文化もコミュニケーション手段も大きく変化し、定年を迎える頃には若い世代との間でうまくコミュニケーションを取ることが出来ず、地域社会から孤立してしまう可能性があります。

 そうならないために、定年を迎えた人達に最新のコミュニケーション手段(IT)と最新の社会情勢や若者の文化、グローバルな感覚などに触れる場所、機会を提供するのです。

 そして、コミュニケーションカを向上させ、人とのつながりを強化し、新しいコミュニティを創造するのです。

 あと半年もすれば私は帰国しますが、今後はそういった新しいコミュニティを創 造するのに必要なさまざまなサービスを考え、提供していきたいと思います。