現地隊員レポート    「りる」第44号より

                                                    セネガル   K.Y.
                                                             平成18年度1次隊後期
                                    
青少年活動                                                                


『バオバブ通信U』
 セネガル生活も早8ヶ月が経過しました(2007年6月現在)。最近、アメリカ映画を見たのですが、画面にアフリカ系の人が映るとほっとする自分に気がつきました。いつのまにかこの環境に慣れてしまったようです。

 さて、私の活動は前回の通信で「村の学校にて情操教育の普及と学校給食のフォローを行う」と紹介しました。今回はその活動についてさらに詳しく記述したいと思います。

 任地では2004年から2年間、「学校給食プロジェクト」というJICAの事業が行われていました。その事後フォローのため、昨年4月から段階的に隊員(青少年活動4名・野菜1名・栄養士1名)が派遣されています。

今年4月にはこれらの隊員活動の取りまとめ役としてフィールド調整員が赴任されました。彼の支援の下、学校給食対象校30校の巡回を行うとともに、プロジェクト・サイクル・マネジメント(PCM)という手法を用いて、より効果的に活動をするための計画を隊員間で立てました。

その結果として「地域の自助努力による継続的な学校給食モデル作成」を共通目標に掲げ、活動を行っています。

 日本の場合は4月から新学期が始まりますが、セネガルは10月から始まり、6月末で終業となります。夏季休暇(7〜9月)の3ヶ月はちょうど雨季と重なり教師も子どもも畑仕事に駆り出されます。我々はこの間にモデルを改良し、10月の新学期に再導入する計画です。まずは次回の会議までに翻訳班(現在あるフランス語の学校給食運営マニュアルを日本語に訳する)と調理法改善班に別れてそれぞれの結果を出します。ちなみに私は栄養士隊員とともに後者の活動に取り組んでいます。

 この活動は、『限られたセネガル政府からの支援食糧でより多くの子どもが給食を継続して得られるように、現在多く出ていると思われる食材のロスを少なくする。また、セネガル食は油と塩分を多量に使用するため、将来、健康への害が懸念される。』ということを踏まえ、給食の分量・味を調査し、調整するものです。

 初回と2回目は市内で我々が調理を行い、近所の子どもに試食してもらいました。この結果をもとに割り出した食材量が「給食」という大量調理に適した分量であるのか、また、味もセネガル人に受け入れられるものなのかを確認するために、3回目は私が活動しているルイ村にて行いました。
  調理の様子(ルイ村)

 実施日前日、我々の活動の趣旨を説明し、協力を得るために、私は村に出向きました。関係者を前に、つたないフランス語とウォルフ語を駆使しつつ、真剣に話をしていたのですが「お肉も買ってきてよ。」「これ、日本語で何て言うの?」「あなたの鞄と服をちょうだい。」等と口々に喋りだし、挙句の果てに「お前は何にもわかっていない。」これは普段は親しみを込めた者に対して言う冗談なのですが、この時の私にはこたえました。伝えられない悔しさで思わず涙。それを見ていた校長が「君が泣いたら僕はどうしたらいいんだい?君がこの村で活動している間は僕に守る責任がある。君は僕の妹みたいなものなんだ。」と言ってくれました。

また別の友達もさりげなく声をかけてくれて一段落。彼らの普段見たことのない対応に胸が熱くなりました。冗談を言った村人も悪気があってのことではないと分かっています。私がストレスを感じているように、相手(セネガル人)も私を理解できないストレスを感じていると思うのです。
  給食風景(ルイ村)

 そして、不安を抱えつつ迎えた当日。計量済みの食材を持参し、給食として児童、教師らに試食してもらうべく、普段、給食を作っている女性に調理を依頼しました。食材を目にした女性らは「米、油が少ない。」と我々が予想していた意見を言うとともに「豆、たまねぎ、ケチャ(干し魚)が多いよ〜。」と、予想外の意見もありました。いつもの分量と異なるためか、途中お米が水っぽくなりましたが、給食の時間までには調理は終了し、見た目も普段と遜色ない形に整いました。

 果たして子どもたちはこの味と量に満足してくれるのか?試食した校長は「セネガル人は油の取りすぎによる成人病が多いから、これぐらい油を控えていると体にいいね。」。調理者である母親からは「豆の量が多いと栄養価が高くなっていい。」と、なかなか好評を博しました。そして食後、子どもたちのボウルを見ると・・・からっぽ!全てきれいに食べてくれていました。「お腹一杯になった?」という質問に、元気に手を上げて「はーい。」

 今回の給食メニューでは良い結果を出すことができ、我々も胸を撫で下ろしました。しかし、この活動は長年の食習慣に変化をもたらすことになります。それはたやすいことではないでしょう。活動も交流も進んでは後退することの繰り返しです。時には進んだ以上に後退することもあります。しかし、それも隊員生活の醍醐味と捉え、残りの任期も楽しみたいと思います。
  配属先から感謝状を受けました。主任とプロジェクトメンバー