現地隊員レポート    「りる」第47号より

                                                    セネガル   K.Y.
                                                             平成18年度1次隊後期
                                    
青少年活動                                                                


『バオバブ通信最終稿』

 久しぶりの雨を目にして、大規模農業と、3ヶ月にも渡る長い夏季休暇の始まりを感じています。学校現場に足を運べるのも残りわずかになってしまいました。

 さて、学期中に給食が中断するという問題を解決するために、今学年度初め、学校給食運営方法改善セミナーを行い、

(1)1人当たりの米と油の分量を減量する
(2)毎回の給食時に計量する
(3)改訂版給食管理台帳を記入の上、提出する

ということを提案しました。これらの改善点を定着させるために、活動校には文字の読めない調理者でも分かるように絵で計量器具の説明を描いたポスターを掲示したり、教師と一緒に台帳の記人内容を確認する作業を行ってきました。

心配していた米と油の減量についても、特に問題なく、児童も給食の量に満足している様子です。このように自分の足で行ける範囲は細かい状況を目にすることができます。

しかし、遠くの学校の給食状況を把握することは困難なため、他のメンバーと話し合い、セミナー後、一度も我々が訪問していない学校にはJICAの車両を使って、巡回訪問を行うことにしました。

この結果、計量器具の使用間違いや台帳の計算間違いなどもありましたが、独自に工夫を取り入れて食材の無駄を省いたり、住民の参加を促しながら給食を運営している学校もあり、全体としては「給食を継続していこう」という前向きな印象を受けました。

  巡回訪問中にて調理者に質問中

 また、巡回を行うことで学校給食の新たな目的を見つけることができました。それまでは正直なところ「セネガルに学校給食は必要なのか?」という疑問を常に抱えていました。なぜなら、給食を必要とする遠方児童はどの学校でも少数派であるため、そのメリットよりも、給食を実施するための教師や住民の負担の方が大きいのではないかと思っていたからです。

この疑問をある時巡回先の村人に率直に投げかけたところ、「給食は遠方児童だけのものではない。本当に貧しくて、一日二食だけの家庭もあるし、お昼があっても家庭の配膳時間が遅すぎて、食べられずに午後の授業に来る子もいるんだよ。」と教えてくれました。

児童が安心して学習できる環境を作る要素の一つとして給食があるということを「理論」ではなく、「現場の声」として直接聞けたことによって、私の中で重くのしかかっていた疑問が解けていくのを感じました。

「給食があることで、週に2回ある午後の授業をより効果的に児童が受けることができる。また、給食があるから午後の授業数を増やすことも可能になる。だから、それらの結果として就学率、進学率の向上といった、”基礎教育の向上”に寄与することができるんだ!」と、やっとセネガルの学校給食の目的を自分の中で飲み込むことができ、また、給食の必要性を改めて感じることができました。

 しかし、そうは言っても、学校給食を実施するためには、政府支援食糧と水が欠かせません。また、教師のストライキによっても給食実施が左右されます。そして、残念ながら、これらは隊員レベルでは解決できない問題です。結果、学校給食のみの活動は非常に幅の狭い、限定した活動になってしまいます。そうならないために、今後は学校給食を入口と考え、そこから活動の幅を広げていく必要があります。現在、これまでの活動と照らし合わせて、次の活動を考えています。

【児童対象の活動】
給食にプラスして学校の魅力の改善
・情操教育
・栄養指導
・衛生指導 等

【地域対象の活動】
給食実施のための土台の改善
・栄養指導
・衛生指導
・収入創出活動支援
・算数、識字教育 等

 先日、「児童対象の活動」を活動校の教師と相談しながら実施しました。授業のプログラムは次のとおりです。

(1)日本の折り紙を使って「輪つなぎ」(図工)
(2)日本の紙芝居
(3)衛生紙芝居「下痢」
(4)手洗い指導・実演
(5)手洗い演習

隊員帰国後は自主的に教師が続けていってほしいという願いから、アイディアは私が提供しましたが、日本の紙芝居のコーナー以外は全て教師にお願いしました。

また、手洗いの内容は調理者にも正しく理解してもらいたかったので、参加してもらうように事前に声をかけておきました。

 そうして迎えた当日。予定よりも早い時間から保護者が集まり始め、調理者だけではなく、父兄も見守る中、輪つなぎから授業開始。日本の色彩豊かな折り紙に初めは恐る恐るといった様子の子どもたちも、次第に夢中になっていき、長くつなげた子は「ほら、見てみて!」と得意げに周りの友達や私に見せてくれました。

  「輪つなぎ」に夢中になる子どもたち

次に行った紙芝居は、初めて見る紙芝居の舞台と拍子木の音に大人も子どももビックリしながら、集中して話を聞いてくれたように思います。

  初めての「紙芝居」

そうして、メインの衛生授業は、私の注文どおり、教師が子どもに質問を投げかけたり、フランス語の分からない保護者のために現地語に訳したりしながら上手に進行してくれました。

 手洗いの演習の時間をもう少し長く確保するべきだったという反省は残ったものの、真面目に準備をしてきてくれた教師のおかげで無事に授業を終えることができました。母親の一人からは「授業参観なんて初めて!子どもたちが学校でよく学習していることがわかってうれしい。」という言葉を残してくれました。

 保護者が学校に来ることで教師が緊張感を持っていい授業をしようとする、児童がはりきっていい姿を見せようとする、それを保護者が見る・・・そんな風に私がきっかけとなり、学校と地域の距離が縮まるのを感じた1日でした。

 残り3ヶ月の任期中に、今度は地域対象の衛生指導、もしくは栄養指導を実施するほか、回収された台帳の集計を行うことを予定しています。また、学校給食プログラム関連の初代隊員らの活動の総まとめ行い、学校給食の今後の方向性をより具体的に示し、2代目隊員らにバトンを渡すことも繋ぎ目にいる自分の役目だと感じています。

 最後になりましたが、日本の紙芝居と紙芝居舞台、拍子木をセネガルに寄付してくださった、三豊市のボランティアグループ「お話しの会 たかせ」の皆さま、三豊市社会福祉協議会の皆さま、ありがとうございました。その他、私を励まし、応援してくださった全ての方々に感謝し、紙面をお借りし、厚くお礼申し上げます。