現地隊員レポート       「りる」第35号より

                                                    セントルシア  E.T.
                                                             平成15年度1次隊
                                     小学校教諭
                                                                

 セントルシアでの1年

 強い日差し。晴れていたと思ったら突然激しく降る雨。蚊取り線香をものともしない蚊。再びこんな季節がやってきました。私がここカリブ海に浮かぶ小さな国セントルシアに来でちょうど1年。振り返ると様々なことがあり、25年の人生の中で一番長かった1年、この間、香川から3人の友人、母、いとこ夫婦が訪ねてきてくれました。引っ越しもしました。また、任国外でNYにも行ってきました。

 何から書き始めればよいのやら・・・。まず、セントルシアの季節の話をしたいと思います。セントルシアは北緯14度に位置し、かろうじて北半球になります。季節は1年中暑く、日本の8月。毎朝ラジオ体操が流れてきそうな陽気です。しかし、季節の変化もあり、かろうじて北半球なので、日本と同様に8月は暑く、12月は涼しくて過ごしやすい季節になります。市場の野菜や果物にも旬があり、いまはマンゴーとアボカドの季節です。

 わたしの活動はといいますと、「りる」第33号にも書きましたが、首都カストリーズにある教育第2分所に所属し(セントルシアには教育第1〜8分所まであります)、第2分所管轄の8つの小学校の算数・体育の向上です。赴任最初の3ヶ月は、各学校を回って授業を見学しました。そこで目の当たりにしたことは、教師は算数の授業はとても熱心だが、体育の授業はほとんどしていないという現実でした。

それものはず、体育という教科がこの国にできたのが今から5年目。教師は体育という授業を受けたことも、学んだこともありせん。カリキュラムもシラバスも存在しないのに、突然体育の授業をするようにと時間割りの中に組み込まれたのでした。体育嫌いの教師がとても多く、「体育の授業をして欲しい」と何人からも頼まれました。そこで、活動は体育をメインで行うことにしました。



 体育の授業を始めると、こども達は予想以上に体育大好き。「Ms.トージョー、次の授業はいつ?」と道を歩いていても声をかけてくれます。体育の授業を巡回しながら教え始めたのですが、全部で8校、クラス数にして135クラス。1人で全部のクラスを教えるのは不可能でした。何枚かに絞ったのですが、それでも1人ではさばききれず、こども達の体育は3ヶ月に1回という悲惨な状態もありました。

やはり、教師が教えられるように体育指導書のようなものを作成するしかない、という考えにたどり着きました。この国にも体育カリキュラム作成担当の人が存在するのですが、作る作る、と3年が経過しており、やっばりのんびりなセントルシアです。

また、わたしが帰ってからも残る事を何かしたいと、体力テストを行うことにしました。そこでまず、現在日本の小学校で行われている体力テストに関する情報をインターネットで調べました。すると、第一学習社(この会社は学校教材関係の出版社だが、体力テストのバックアップも行っている)のホームページにヒットし、一か八か、体力テストに関して支援して欲しいとお願いしたところ、パンフレットや体力テストグッズをいくつかセントルシアに送って下さいました。

  スポーツテストの様子 (1)

  スポーツテストの様子(2)

日本とセントルシアでは、学校の設備からしてびっくりする程の違いがあるのだが、第一学習社さんのご厚意を無駄にしてはいけないと、8校の中で最も設備が整っている学校で、日本と同様の体力テストを実施してみました。決してスムーズにはいかなかったものの、何とか全種目の記録を取ることができました。いろいろ問題山積ですが、残りの1年は8校全部で体力テストを実施、比較ができたらと考えています。そこで、

この「りる」第35号を読んでいる皆様、握力計や巻き尺を寄付していただける方募集中です。

とにかく物資不足が悩みの種ですね。また、日本ではあたりまえになっている体育着。この国では存在しているのですが、着用しなければならないという概念があまりありません。体育着着用がわたしのもう一つの課題で、体育着着用ポスターを作成して全クラスに掲示しました。効果は・・・。乞うご期待です。

 一方算数では、受験を控えている小学校6年生を対象にプチ川合塾?ばりの算数模擬テストを全国で実施しました。テスト作成から実施、分析とセントルシア小学校教諭隊員5人(わたしと同様に教育第1・5・6・8分所に配属)で、とても大変な作業でした。しかし、教員は初めて生徒の順位というものを知り、予想以上に反響がありました。

 淡路島ぐらいの大きさの小さなセントルシア。そして、在留邦人数おそらく21人(うちJICA関係者16人)のセントルシアは、隊員同士がとても仲良し。3ヶ月に2回の割合でNAKAMAという活動を行っています。場所は隊員の巡回する小学校。小学校教諭隊員が持ちまわりでコーディネーターとなり、参加可能な隊員と1日JAPAN DAYのようなことしています。6月にわたしが担当のNAKAMAがあり、その時は日本文化紹介、環境教育などを行いました。

 この7月に帰国した先輩隊員から「残りの一年あっという間です。活動がんばってね。」というメッセージをいただきました。この1年があまりにも長すぎて、あっという間という気がしないのですが、きっとあっという間なのだろうとも思います。そろそろ帰国後のことも視野にいれつつ、残り1年精一杯頑張りたいと思います。
  体操着着用ポスター