現地隊員レポート             「りる」第77号より 

                                                    ソロモン   吉岡 三貴
                                                             平成29年度(2017)3次隊
                                         看護師
   

『ソロモンでの生活と活動について』

 大洋州にありますソロモンの首都ホニアラで、看護師として活動をしている吉岡三貴です。ソロモンに派遣されて1年6ヶ月が経ちました。実は、JICAボランティアに申し込むまで、私はソロモンという国の名前も場所も知りませんでした。ソロモンは観光地としても有名な国ではありませんので、皆さんの中にも知らない人が多いのではないでしょうか。今回はソロモンのこと、私の活動や余暇の過ごし方などについて紹介したいと思います。

1.ソロモンの位置と気候
ソロモン(正式名称:ソロモン諸島)は、日本の南南東、オーストラリアの北東、パプアニューギニアの東方に位置する島国です。国土面積は四国の約1.5倍、人口は約60万人です。熱帯雨林気候で、1年を通して高温多湿です。特に11〜4月は雨季のため雨が多く蒸し暑い日もありますが、貿易風が吹くと暑さが緩和されますので、日本の夏よりも過ごしやすいです。

2.ソロモンと日本の関係
ソロモンの首都があるガダルカナル島は、第二次世界大戦で日本とアメリカの激戦地となりました。この戦いにおける日本軍の死者・行方不明者は2万人を超えたと言われており、そのうち半数のこ遺骨しか日本に帰還していないため、現在も遺骨収集活動が行われています。

また、当時使われた戦艦や戦車、大砲(写真1)などがそのまま残されていますので、これを見るたびに戦争や平和について考えさせられます。このような過去がありましたが、これまでの日本の支援やソロモン在住の日本人の方々が友好関係を築かれたおかげで、ソロモンの人々は日本人に対してとても好意的で、私が困った時にはワントークと同様にいつも助けてくれます。


写真1:首都に残された大砲
写真2:ガダルカナル島に建てられた慰霊碑

3.ソロモンのワントク文化
ワントク文化とは、ワントーク(同じ言語を母語にする人々、同郷で慣習的な文化などを共有する人々)が困った時に助け合う文化のことで、例えば両親が仕事で子供を残して留守にしても、ワントークの誰かが家事や子育てなどを手伝います。このワントークの関係はとても強く、ワントーク間で食べ物を分け合い、住むところを共有しているので、ソロモンの街中で物乞いする人やホームレスを見かけることはほとんどありません。

4.配属先と活動について
私の配属先は、首都ホニアラにある保健・サービス省の生活習慣病(NCD)対策課です。以前はソロモンの死因の上位はマラリアなどの感染症でしたが、現在は食文化の変化などによりNCDが上位を占めています。中でも糖尿病患者の増加は著しく、首都にある国内唯一の国立病院では、週に3〜5人の糖尿病患者が下肢を切断していると報告されています。

この現状を食い止めるために同僚と協力して様々な活動を行っています。具体的には、省庁やコミュニティで健康診断を実施、啓発用の資料の作成、イベントなどの施策の企画・実施などです。何の活動をするにも共通して言えるのは、計画通りには進まないということ。

年間計画はあってないようなもので、計画しても予算がないなどの理由で延期し続け、結果中止となることもしばしば。思うように進まなくても、「ノーワリノーワリ(Don't worry、心配しないで)」と言うソロモンの人々に、心配性の私は不安になることもありますが、ソロモンの人々のペースに合わせつつ、時にはお尻を叩いて刺激を与えながら日々奮闘しています。

 昨年の9月から、配属先の駐車場で、毎朝9時に体操を行っています。(写真3)昨年までは日本のラジオ体操を行っていましたが、今年からは他部署で活動していた隊員が製作した体操を行っています。今後はラジオやインターネットを利用してこの体操を普及させたいと思っています。

 また、今年の2月に、大洋州にある国でNCD対策に携わる隊員とその同僚達がブイジーに集まり、各国の取り組みの紹介や事例検討、今後の活動計画・立案などの実施、フィジーの施設を見学する研修会に参加させて頂きました。他国の取り組みは今後の活動の参考になりましたし、ソロモンから参加したメンバーの連携を強化する良い機会となりました。


写真3:配属先で同僚たちとラジオ体操している様子
写真4:フィジーで行われた研修会での集合写真

5.ソロモンでの余暇の過ごし方
活動以外もソロモンの人々と触れ合う時間を大切にしています。マーケットで手作りの商品を売る傍らで編み物を教えてもらったり(写真5)、自宅にお邪魔してソロモンの伝統食の作り方を学びご馳走になったり、ダンスを教えてもらつてホテルで踊る(写真6)など楽しく過ごしています。


写真5:教わって作ったポーチ
写真6:ホテルでタムレダンスを披露

6.ソロモンの食文化


ソロモンの人々が作る料理には、ココナッツミルクがよく使われています。野菜や魚、肉などをココナッツミルクで煮込んだり、野菜にかけてサラダにして食べたり、すりおろしたキャッサバ(芋の一種)と混ぜ合わせて、バナナの葉に包み石蒸し焼きにする(写真7)など、様々な料理に使われています。

私も削り器を購入し、月に1回ぐらいですが、自分で削って料理に使っています。(写真8)削る作業は慣れるまでは大変ですが、自分で削って絞り出すココナッツミルクは、缶で売られているココナッツミルクよりも新鮮で美味しいので、ソロモンで缶のココナッツミルクを購入したことはありません。


写真7:伝統食のキャッサバプディング
写真8:ココナッツと削り器

7.ソロモンでのうどん作り
初めてソロモンでうどんを打ったのは、ソロモンに来て3週間程経った時でした。日本から持参した麺棒を使って、日本で習った分量で打ってみたところ、ほとんど生地が伸びず、少し細長いすいとんのような短いうどんができました。

讃岐うどんのようなうどんが打てるようになりたいと思い、ソロモンで手に入る小麦粉とソロモンの気候に合った塩水の分量を模索しながら打ち続けた結果、少しは讃岐うどんに近いうどんを打つことができるようになりました。ソロモン人だけではなく、ソロモン在住の日本人にも食べてもらっていますが、ソロモンでうどんを食べる機会があまりないからかとても喜ばれます。

また、振る舞うだけではなく打ち方を教える機会もあるのですが、つい最近、ソロモン人に初めてうどんを打ってもらいました。生地を伸ばすことや切る作業にとても驚いていました。(写真9・10)うどんを通して多くの人々と交流を深めることができています。


写真9:友人と自宅でうどん作り1
写真10:友人と自宅でうどん作り2

 そして、今年はJICAボランティアがソロモンに派遣されて40周年になる記念の年なので、7月に記念イベントを開催するのですが、このイベントでうどんを振る舞うことになりました。約40玉打ち、120人に振る舞う予定です。このイベントの様子は次回ご報告させて頂きますのでお楽しみに!

 今回はソロモンのこと、ソロモンでの活動や生活について、ほんの一部だけ紹介させて頂きましたが、紹介したいソロモンの魅力はまだまだたくさんあります。任期は残り6ヶ月となりましたが、引き続き、日本とソロモンの相互理解を深めることや生活習慣病患者の増加を防ぐための活動に全力を尽くすと共に、この模様を日本の皆さんにもお伝えしていきたいと思っています。