現地隊員レポート             「りる」第68号より 

                                                    タイ       三澤 智
                                                             平成26年度2次隊
                                         理学療法士
   

『タイ国における活動報告』

 タイに赴任して一年半が経過しました。青年海外協力隊として、理学療法士としてタイ国・現地の方々に何が出来ているのか考える日々でもあります。今回は活動報告に合わせ、タイと日本における医療人材の差についても報告したいと思います。

 私の活動先は、身寄りがなく地域で生活することが困難な18歳以上の男性のみが入所する障害者施設(若年層は知的障害、高齢層は身体障害が主)です。入所者数は316人。そのうち車椅子を使用する方は111人。リハビリの対象となっているのは車椅子を使用する方が中心です。理学療法治療を行う活動と同様に、ずっと取り組んでいるのが車椅子の使用状況改善についてです。

 タイは仏教国であり、寄付や奉仕活動をすることが一般的な文化ともなっています。ASEANの中では上位の経済状態であるタイにおいても、福祉施設は地域の企業・個人から寄付されるお金・物品があるからこそ成り立つ状態です。車椅子も寄付に頼っていますが十分な数は確保できない状態であり、着任時は部分的に壊れても使い続けなければならない現状がありました。
 壊れた車椅子


加えて車椅子を共用で使用していたため、自分で動ける方が壊れていない車椅子を確保し、介助量の多い方・自分で訴えることのできない方が壊れた車椅子を使用し、介助者がいなければ移動できず活動性が落ちていました。これを改善するために、まず壊れている車椅子を少なくするにはどうしたらいいか、そして車椅子は体格・症状に合わせて選択・微調整するものであるため、使用する車椅子を個別化するにはどうしたらいいかを話し合うことから始めました。

 同僚は「どこかが壊れたからといってすぐに車椅子を交換することは出来ない。車椅子はいつ寄付されるかわからないため、新規入所者のためにある程度在庫も残しておかなければならない」ということから、廃棄車椅子から使える部品を取り外して再利用することを提案しました。そして施設内のゴミ捨て場に山積みになっている廃棄車椅子から部品を取り外し交換してみると、思った以上に上手くいきました。
 いっしょに車椅子を修理


廃棄金属類は売却して施設予算に組み込んでいるということから、部品を取り外して再利用する許可も得ました。こうして同僚と協力して部品交換を続けることが出来ています。個別化については全車椅子に名札を付けました。これによって誰の車椅子が壊れたのか把握して修理できるようになりました。

 しかし、これで車椅子の問題が解決できたわけではありません。寄付で集まる車椅子はサイズが大きいものが多く、自分で駆動することができずに介助を必要としてしまう方がいます。施設予算ではその方への車椅子購入が困難なことから、現在はJICA予算にて購入できないかJICAタイ事務所と相談しています。

 日本は高齢化社会(65歳以上の人口比率7%以上)から高齢社会(14%以上)になるまで24年間と比較的短い期間で高齢社会となりました。数年前に高齢化社会に突入したタイは日本よりも早い22年間で高齢社会になると推測され、今後30年の間に65歳以上の人ロは現在の9%から25%になると推測されています。急速に高齢化が進むタイにおいて、医療人材は全体的に不足しています。

タイと日本の理学療法士数を人ロ1万人当たりに換算した場合は6倍の差、他リハビリ関連職種である作業療法士数、言語聴覚十数は35〜40倍もの差があります。そういった背景もあり、日本のリハビリ関連職種がタイ国から求められています。

 現在は介護度が低く自分で動くことのできる方も5年後、10年後には介護がより必要になることが予想されます。車椅子が原因で活動性が低下しないように、今の段階から症状に合わせて自分で動いてもらうための環境を整えていくことが必要と考えます。そのため車椅子について同僚と話し合い、協力して活動の柱にしています。残りの任期はあっという間に半年をきりました。あれもこれもと焦る毎日ですが、一つ一つ頑張ろうと思います。


同僚と地域の集会所でリハビリ体操指導
(職員以外は顔を隠しています)

ベッドサイドでのリハビリ

同僚と活動施設内でリハビリ体操指導

治療は同僚と確認し合います