トンガ初便り        「りる」第11号より

     トンガ            I.S.

                     平成7年2次隊

                     電話線路

 

 私がトンガに来てニケ月、その内四十日余りは現地訓練(トンガ語、ホームステイ等)があり実際の任地活動はまだ三週間しか経験していませんが、私なりにトンガという国を報告したいと思います。

1.トンガという国
 トンガは大洋州の南半球にある小さな島国です。日付変更線のすぐ西にあるため世界で一番早く朝が来る国です。(日本よりも四時間早い)大小160くらいの島からなり、実際に人が住んでいるのは30余りの島です。大きさは全部の島を合わせても琵琶湖くらいで、首都のある一番大きな島はその三分の一くらいです。

トンガの人口は約10万人ですがニュージーランド、オーストラリア、アメリカ等へ渡って生活している人が国の人口と同じくらいいるそうです。わたしは首都のヌクアロファで生活していますが全く平坦な島で山がありません。大きな津波が来ればあっという間にトンガはなくなってしまうと思う程ですが、この辺りは津波が起こりにくい地形だということです。

この国で一番高い建物は五階です。最近日本の援助で建てた近代的な建物です。その建物の三階にJOCVのオフィスが入っています。私も時々そこを訪れますが、五階へ上ると島全体を見渡せる程です。首都といってもすごくほこりっぽく裸足で歩いている人もよく見かけます。トンガ人は大きいと聞いていましたが確かにみんな大きいです。

背も高いですが成人で細い人はめったにいません。みんながっちりした体格か太いかです。女性も同様で、足の大きさにはびっくりするものがあります。日本で私と同じ背の高さの女性だと足の大きさは男である私の方が大きいはずですが、トンガではそうはいきません。一度女性のパンプスを履かせてもらいました。

私の足を入れてまだ指二本、踵(かかと)のところに入りました。ちなみに私は25.5cmの靴です。それにその女性は私より背が低かったのです。本当に大きな人達ですが、子供の身長や体重は日本人と変わらないと思います。成長期にぐんと伸びるみたいです。そして赤ん坊には日本人と同じ蒙古斑があるのです。

きっと遠い音、我々と同じ人種が海を渡って来たのでしょう。トンガの人は目が合っただけでもニコッとして眉毛を動かして返事をしてくれます。とてもおもしろいです。


2.任地での生活環境
 首都は意外と車が多くその割に信号が一つもなく非常に危険です。走っている車も八割は日本の中古車で○○市役所、○○会社と書き残したまま使っていてちょっぴり日本を思い出してしまいます。道は、一応アスファルト舗装をしていますが、とにかくデコボコで本当にガタガタ道です。

日本の援助で舗装した道路だけはとてもきれいです。水道は殆どの所で通っていますがカルシウム分が多いため飲み水には適していません。みんな雨水を水タンクに溜めてそれを飲んでいます。水道の水圧も所によっては低く近所の家が使っていたりすると全く出ない時もよくあります。家畜は基本的に放し飼いでそのことが衛生面をかなり悪化させていると私は思います。

 街の中心以外は豚や鶏が道を横切ったりします。そしてなにより危ないのは犬が狂暴であることです。夜にはトンガ人でさえ棒を持って歩く程です。あとお店では大体の物が手に入りますが、野菜の種類が限られています。

でもその代わりに日本では殆ど見かけない果物が手に入ります。でもお店は平日と土曜日の午前中しか開いていません。日曜日はみんな教会に行く日(安息日)なので車も殆ど見かけません。静かでいいのですが日本人の私にとっては不便を感じてしまいます。

  S隊員と同僚たち


3.職場の概要
 私の勤務するトンガテレコムは日本で言うNTTと同じです。国全体で200名のスタッフがいますが国民の人口を考えると多いですよね。私は主に外の作業をしていますが、その工事部は街の中心から車で五分程の所にあり約50名のスタッフが働いています。その内テレコムの車を修理をする人が5名、大工さんが5名います。

車は日本で言う廃車のような車ですから従業員の中に修理担当者が必要なわけです。今、オーストラリアからコーディネーターのような立場で一人トンガテレコムに来ています。直接現場に出るのではなくトンガテレコムそのものを改善しようと考えているみたいです。その人が中心となった管理者の会議は英語で行われます。

でもスタッフの会議は当然トンガ語です。私はトンガヘ来れば公用語が英語なので、二年後には英語がペラペラになって帰れるぞと思っていましたが、いざ現場に行ってみるとみんな私にトンガ語を教えようとします。当人同士の会話も当然トンガ語です。今は「早くトンガ語を覚えたい」そんな気持ちです。

 こちらの人は思ったよりもよく仕事をするし、技術的にもさほど劣っているとは思えません。日本はお金があるから最先端の技術を導入し設備投資をしますが、ここではそれが出来ないのです。何日も電話が故障になっていてもお客さんも怒ったりしません。やっぱりのんびりした国だからでしょう。仕事中によくマンゴを食べながらとか、ヤシの実を取って来て喉の乾きをいやしたり、日本では時々コーヒーを飲んだりします。

タバコを吸ったりはOKだけど、物を食べながらはダメと言ってもこれがトンガ流(This is TONGAN WAY)の一言で全ての事を済ませてしまいます。のんびりした国ではそのやり方が一番合っているのでしょう。これから先フレンドリーなトンガ人に助けられながら、自分はJOCVのメンバーとして何が出来るか、彼等のやり方をじっくり見ながら見つけたいと思っています。

  ホームステイ先の子供たちとS隊員