『ベトナム帰国報告』    「りる」第48号より

                                                    ベトナム   J.H.
                                                             平成18年度1次隊前期
                                    
日本語教師                                                                


 無事に2年間の任期を終え、6月29日に帰国いたしました。簡単にベトナムでの活動を報告させていただきます。

【協力隊に応募した理由】

  まず、協力隊に応募した理由をお話したいと思います。大学生のときに第二外国語で中国語を選択して、中国に短期留学したんですが、その時に初めて、中国人の先生から全部中国語で中国語を習いました。それまで中学校や高校で英語を勉強したときは、文法の説明などは全部日本語で行われていたので、どうしても授業で聞くことばのほとんどが日本語になってしまって、たくさん勉強してもなかなか身につかなかったような気がしていました。

中国での全部中国語の授業は、最初は自分が指名されていることにも気づかないぐらい全然分からなかったんですが、だんだん分かるようになってきて、中国にいたのはたった一ヶ月だけだったのに、すごく上手になったような気がしました。その教え方に感動して、これを日本語でやってみたい、と思うようになり、日本語教師を志すようになりました。

 その後、大学の研修旅行でタイの少数民族の村を訪れて日本文化を紹介したことがきっかけで、途上国での生活に興味を持つようになり、「日本語教師」と「途上国で暮らす」というふたつの夢をかなえるために青年海外協力隊に応募しました。

 授業風景

【ベトナム紹介】

  そして無事に合格して、18年度1次隊の日本語教師隊員として、ベトナムのハノイに派遣されました。ベトナムは東南アジアに位置していて、一年中暑い国、というイメージがありますが、私が住んでいたハノイは、日本と同じように四季があります。ベトナムは、日本から九州を除いたぐらいの面積で、人口は約8千500万人です。日本と同じように南北に長いため、方言や性格、料理の違いなどが見られます。日本でも有名なフォーという米の麺は、北部の料理なので南部ではあまりおいしくないそうです。また、ベトナムといえばバイクが多いことでも有名です。

【配属先紹介】

  配属先は、ハノイ国家大学人文社会科学大学の東洋学部日本学科でした。この大学は、JOCVの受け入れが私で5代目ということで同僚たちも慣れていて、日本語教師経験も社会人経験もない私をいつもサポートしてくれました。

 学生とJOCVとの交流会

【活動紹介】

  主な活動は、毎日の日本語の授業でした。
1年生から4年生までの全てのクラスの会話や作文、スピーチなどの授業を担当しました。授業のほかには、書道のセミナーや折り紙教室、日本の大学生との交流会、べトナムJOCVとの交流会などを行いました。また、2年間の活動の中で力を入れたことは、大学で行われている定期テストの改善や、毎年12月に行われている日本語能力試験の対策です。

先ず、定期テストは、これはベトナム全体の傾向かもしれませんが、前もって覚えたものを発表するだけの場でした。日本語の口答試験も、スピーチや会話を事前に準備しておいて、それをそのまま発表するだけだったので、それでは本当の日本語の力は図れないと考え、その場で題を与え、自分で考えて話すやり方に変えました。

ベトナムのやり方を変えることに対する不安もあったのですが、実際にやってみると同僚や学生からも好評で、これからもこのやり方を続けたいと言われたので、思い切ってやってみてよかったと思っています。また、日本語能力試験の対策ですが、ベトナムには現在多くの日系企業が進出しており、その多くが「日本語能力試験2級取得」を採用条件としています。

 東洋ナイト祭り

そこで、授業内でその対策を行いました。試験対策というのは私自身初めての経験だったので、準備も大変だったし授業中に学生から急な質問を受けて困ってしまうこともあったのですが、日系企業での就職を目指す学生が多かったため学生たちのモチベーションは高く、やりがいがありました。対策を行った結果、例年より合格者が増えたため、今後も同僚教師に続けてほしいと思っています。

【まとめ・感謝】

  2年間を振り返ってみると、ありきたりの感想ですが、何かを任地の人々に教えたというより、自分自身が多くのことを教わった2年間でした。ベトナムで活動していちばん強く感じたことは、もっと日本について勉強しなければならない、ということでした。日本の歴史、地理、文化、現代社会についてなど、学生から質問されてもすぐに答えられないことがあり、自分自身の無知を痛感しました。

しかし、唯一書道だけは小学校のときからずっと続けていたので、大学での授業やセミナーだけではなく、ベトナム中部で行われた祭りでベトナム人書道家と協力してイベントを行ったり、ハノイ日本語祭りでスピーチの題目を書いたりするなど、特技を生かせる機会が多くありました。今後はこのような自分の強みになる部分を増やして、日本語だけではなく「日本」を教えられる日本語教師になりたいと考えています。

 ハノイ祭り日本語祭り1

 最後になりましたが、香川県青年海外協力隊を育てる会の皆様のあたたかいご支援のおかげで、2年間の任期を無事に終えることができました。本当にありがとうございました。送ってくださった文房具は毎日の授業にすごく役に立ったし、ポストカードは、1年生の最初の授業のときに、裏にカタカナで一人ひとりの名前を書いて配ってすごく喜ばれました。

また、任地では携帯電話に金比羅さんのお守りをずっとつけていました。2年間見守ってくださって、心から感謝しています。これからは同じ育てる会の一員としてがんばりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ハノイ祭り日本語祭り2