現地隊員レポート    「りる」第37号より

                                                    ベトナム   A.F.
                                                             平成16年度1次隊
                                     養護
                                                                


『毎日がんばってます』

 香川県青年海外協力隊を育てる会のみなさま、先日は「画用紙とクレヨン」を贈ってくださりありがとうございました。生徒たちに「日本からのプレゼントだよ」と説明すると、次々と画用紙に触り、その分厚さに目を丸くして「トット、タワー(すごく、いい)」と大喜びでした。大事に使わせていただきます。

 さて、日本は極寒の2月ですが、ベトナムでは雨季が終わり、初夏を思わせる陽気が続いています。そして、陰暦を使用するベトナムでは、2月9日から正月を迎えます。ベトナムでは正月のことを「テト」といいます。ベトナム人にとって「テト」は一年の中で最も大きな行事で、この日ばかりは、越僑(海外のベトナム人)もベトナムに戻り、家族で正月を迎えるのだそうです。
 (バインチュン)豆や豚肉の入ったちまき

ベトナム人は「テトももちろん楽しいけれど、それ以上にテトを迎えるまでの準備が楽しい」と言います。目下、町は赤色、金色で彩られ、花市場は軒並み「菊と梅」で埋め尽くされています。ちなみに、南北に細長い国、ベトナムでは、お正月を象徴する花も地域によってさまざまです。ベトナム北部はピンクの桃の花、南部は山吹色の梅の花、中部にはその両方が存在します。また、ベトナムには正月料理もあります。代表的なのは「バインチュン」と呼ばれる豆や肉の入った特大ちまきで、これをケーキのように切り分けて家族で食べるのが伝統であり、これなしに正月はありえないとまで言います。
 新聞を読むシクロの運転手。最近ではシクロも減ってきました。

 家族の結束が極めて強いベトナム人にとって、私が日本に帰らず、家族から離れて正月を迎えることが不思議でたまらないようです。事情を説明すると、今度はさまざまな家から招待を受け、日本のようにゆっくり正月というわけにはいかない気配です・・・。
 船の上で果物を売る人々

 活動の方ですが、6ヶ月が過ぎ、依然として言語の壁はあるものの徐々に慣れてきました。美術の道具不足については、前回の「りる」に記載させていただきましたが、その後、学校としてもなにかできるはずだと考え「クリスマスカード」の作成・販売を行いました。11月の末から2週間ほど時間をいただき、聴覚障害の生徒(11歳〜16歳)にそれぞれの能力にあった作業を担当させ、作業学習のような形で120枚ほど製作しました。当初、カッターを使うのも初めて、紙の端と端を合わせて折ることもできない状態で、果たして商品になるのかと心配しました。ところが、慣れるに従い、すばやく丁寧に作業できるばかりか、カードを糊で汚さないように生徒が自主的に濡れふきんを準備するなどの工夫を始め、私が逆に驚かされました。
 カッターを使うのは初めて。立体カードづくりに挑戦!

 結局、60枚強の売上で、微々たる文房具が買えた程度でしたが、生徒にとってはよい経験だったのではないかと思います。これを機会に、1月からは、美術の授業に加え、週2回午後に16歳の生徒を対象に「作業学習」を始めています。現在は、ベトナムをモチーフにした立体絵カードやビーズ細工を教えています。
 生徒作品−シクロ

 最近、私も生徒を落ち着いて観察できるようになり、授業態度でも気になる点がちらほら・・・。日本でなら叱れる場面でも、文化の差を考えると「果たしてここで叱るべきなのか、否か」と悩むうち、ついついタイミングを逃してしまいます。ベトナムの学校では、朝食を外でとる習慣から、ご飯やお菓子を学校に持ちこむのが常で、そのあたりのマナーが以前から気になっていました。
 カード表紙

先日、ついに16歳の男子生徒を叱ったところ、相当ショックだったらしく、午後の授業は戻っできませんでした(もちろん翌日は元気に登校し、いい関係が続いています)。当初、ベトナムの生徒は日本の生徒より純粋で扱いやすいなどという勝手な解釈をしていた私ですが、なんのなんの、生徒は日本もベトナムも一緒だなと今更に思います。
 ハノイの総会で販売

 この6ケ月、あっという間に過ぎ去り、夏休みを考慮すると、生徒と関わることができる時間が10ヶ月足らずしかないことにふと気づきました。しかし、これからも焦ることなく、ベトナムの良さを学びながら、私なりに頑張っていきたいと思います。